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銀色の風  作者: 紫音
~第1章~
136/509

134.抱っこ

「抱っこのダメな理由を教えていただいても?」

「まだ実体から離れてはダメよ。空中で回っているの。ガイが来たら実際に眠っているところを見せてもらったらいいわ」

「そう言えばシルフィーナ様は空中で回りながら眠っておられましたね。その空中でガイも一緒に回るのですね」

「そう、だからまだ駄目なの。それともう一つ理由があるわ」

ルーカスは黙ってシルフィーナの言葉を待った。

「贔屓じゃないのよ。ただ、今はあの子の大切な仕事を取り上げたくないの。それでなくてもあと3か月足らずでこの仕事が一旦終わるわ。あの子しかできない仕事を一つは残してあげたいのよ」

「そうですね、もうすぐ定着ですよね」

「ええ、私の定着前までにルーカスが実体を離れることは許可できないわ。ごめんね」

そう言うとシルフィーナはルーカスを抱きしめた。

「ジーンに叫んだそうですね、それは?」

「あの時はガイだと思って寝ていたのよ。目が覚めたら襟足の髪が薄茶色だったのでびっくりして叫んで泣いちゃったの」

「あはは、ジーンは災難でしたね」

「驚きのあまり打ち消さなかっただけ褒めて欲しいわ。ジーンを消滅させたらお兄様に顔向けできないところだったわ」

「おお!怖い怖い、ふふふ」

「ルーカス、そろそろ寝ましょう。子供の体では眠いでしょ。私、添い寝してもいいかしら?」

「ええ、嬉しいです。シルフィーナ様」

シルフィーナはルーカスのベッドに横になるとルーカスにピッタリ寄り添った。

「ガイが来たら・・・いつもの寝姿を・・・見せてもらうと良いわ・・・明け方まで・・・ここで眠りましょう・・・て、ガイに伝えて・・・ね・・・」

「はい、おやすみなさいませ、シルフィーナ様」

ルーカスは女神と向かい合わせになり女神の体を引き寄せ抱いて眠った。


ガイがジャシス伯爵邸に来たのは、それから約2時間後だった。

「ルーカス、ガイだ、ルーカス」

ガイに起こされたルーカスは神霊体を表すと、神霊体はベッドの上でシルフィーナを抱いたまま眠っていた。

「ガイか、遅かったな。気持ちよく沈没したかい?」

「シルフィーナ様に聞いたのか?」

「ああ、アベルの後ろで沈没したんだろ?」

「いや、沈没できなくてアベルを落とした後にシルフィーナ様が沈没させてくれた」

「なんだ、それ、ふふふ。さあ、シルフィーナ様からの伝言だ。今日は明け方までここで寝るそうだ。朝になるとここは五月蠅いからね。それまでシルフィーナ様と君の寝姿を見たいって頼んだんだよ。いいかな?」

「寝姿?良いけど、何でそんな話になったんだ?」

「抱っこしたいって言ったら、やっぱり断られた。実体から離れる許可は出来ないとおっしゃったよ。だから見たいって」

「分かった。じゃあシルフィーナ様を抱っこするから手を離して」

そう言うとガイがシルフィーナを抱っこして、空中で回り始めた。

二重結界の中で、ゆっくり回る姿は、お互いの肩に顔を埋めているので顔はほとんど見えなくなるが、銀の髪がふわふわ揺れ、薄紫色のサッシュを巻いたトーガもゆらゆら揺れ、とても美しい光景だった。

ガイが昨日、自分に少し嫉妬心を持ったのは分かったが、今日は自分がガイに少しの嫉妬心を抱いた。

シルフィーナ様は神族にそれぞれの特徴を生かし、それぞれの役割を持たせてくれているのだと悟る。

この美しく健やかな寝姿は、ガイでなければ成し得ないものなのかもしれないとも思った。


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