125.熱い吐息
ガイの言葉になんだか拍子抜けしたシルフィーナだったが、何だか疲れたのは本当なので有難くガイの腕の中に飛び込んだ。
「はぁ~」
とガイの腕の中の心地よさに吐息が漏れた。
ガイは何も言わず、いつものように背中と膝裏を支えてピクリとも動かなかった。
いつもならガイの首に腕を回し、肩に頭を乗せて眠るのだが、まだいつもよりは早いので眠れそうになかった。
体を起こして、左手でガイの肩をつかみ、右手でガイの頭を撫でてガイの顔を見ていた。
白髪に薄赤い瞳、凛々しく美しい顔立ちにほんのり笑顔を浮かべ、シルフィーナの顔を見ていた。
お互いの目が合ってもガイは何も言わないし、何も行動に移さない。
肩をつかんでいた手で頬を撫でてみたら、ガイが目をつぶりシルフィーナの手の感触を頬で確かめていた。
ここで接吻をしたらガイの決心が崩れるのが目に見えているので、あえて接吻をしない。
頬を撫でていた左手の親指でガイの唇をなぞってみた。
閉じられていた唇はシルフィーナの指がふれるとフッと小さく開いた。
真ん中に親指を持っていくと上下の唇がパクパクと親指を挟み込む。
(ああ、やっぱりまだ寂しいのね)と思いつつ、目をつぶったままのガイの唇に親指を触れたままにする。
中から舌が親指の腹を撫でた、何度も何度も撫でた。
少し奥に指を差し込むと上下の唇が閉じ、噛まないように気を付けているのか歯は当たらないが、奥で舌が親指を舐めまわしていた。
たったこれだけの愛撫だというのにガイの顔が赤く染まり、とろけてきた。
頭を撫でていた右手で額から前髪をかき上げてみると、ほんのりと汗をかいていた。
そのシルフィーナの仕草に開いたガイの目は、トロンとしてまるで泣いているかのように白目まで少し赤くなっていた。
「泣いているの?」
指をくわえたまま、少しだけ首を振る。
ガイの左頬に自分の左頬を当てるとかなり熱かった。
「興奮しているの?」
ガイの耳元でそう聞いてみると、まだ指をくわえたまま、躊躇いがちにほんの少しだけ頷く。
シルフィーナは右腕をガイの背中に廻しギュッと抱きしめたら、ガイの腕にも力が入り抱きしめられた。
その腕の感触がとても心地よく、シルフィーナの口から吐息が漏れた。
「ああ、ガイ、私の優しいガイ、大好きよ。ガイにはたくさんの我慢を強いているけど、私と二柱だけの時は我慢をしなくてもいいのよ。ルーカスも、甘えなさい、って言ってたわね。お外では凛々しいガイがとても素敵で大好きよ。でも私との時だけは可愛いガイでいいのよ。私の可愛いガイ、大好きよ」
そう言うと、左手の親指がガイの口からポロッと滑り落ちた。
シルフィーナの首筋にガイの熱く興奮した顔が埋められた。
首筋に接吻するわけでもなく、ただ、首筋に顔を埋めて、ガイは何かを考えるようにじっとしていた。
吐き出された左腕を背中を抱いていた右手と繋いでガイの首に廻し、いつでも眠れる体制に持って行った。
ガイがシルフィーナの首筋で吐息を吐いた。
熱い吐息が首筋から胸元に広がり、ガイが自分の中で興奮を消化しようとしているのだと悟る。
あまり煽ってガイの決心を崩す訳にも行かず、しかし、あまり我慢させるのも可哀そうだとも思う。
「寂しくなったら言いなさい。甘えたくなったら言いなさい。我慢が出来なくなったら言いなさい。・・・いつでも起こしていいわよ。・・・私はガイの女神なのだから・・・」
そう言うとシルフィーナは、徐々に眠りの底に落ちてゆくのだった。
そんなシルフィーナを抱いてガイは消化しきれない興奮をシルフィーナの首筋に熱い吐息と言う形でぶつけるのだった。




