123.モリエール侯爵夫妻の体
夜中、シルフィーナとガイはスタニラスガ王国のアレクシウスの元へ飛んだ。
「お兄様、お待たせいたしました」
「おお!来たか。ではモリエール侯爵の所に行くか」
「はい、よろしくお願いします」
アレクシウスはチラッとガイを見たが、昨日と違いシルフィーナの腰を抱かず、斜め後ろに控えている。
あえてガイの件には触れず、アレクシウスはジーンに体を預け、シルフィーナとともにモリエール侯爵邸へ飛んだ。
まだ幾分早かったのか、侯爵は邸内の執務室で書類に目を通していた。
「お兄様、どうします?侯爵を神技で寝かせます?」
「このままでも神技をかけれるが、寝かした方が良いかもしれないな。俺がやろう」
そう言うとアレクシウスは侯爵に向かい軽く指を動かした。
侯爵はため息を一つついて書類をデスクに置いて立ち上がった。
そのまま寝室に向かうようなので、ぞろぞろと付いて行くが、当然侯爵には神霊体の存在は分からない。
寝室にはすでに侯爵夫人が眠っていて、侯爵は眠っている夫人の額に接吻をすると隣で眠った。
その様子を見たシルフィーナが
「噂通り仲の良い夫婦のようですね」
と言った。
「この夫婦の仲の良さは王城でも安定感のある事実だ。だというのに子供が出来ないのが不憫だと思っていたんだ。たとえ女神と言う仮初でも子供が出来たら、この夫婦は幸せを手にできるだろう」
とアレクシウスはベッドで仲良く眠る侯爵夫妻を見ながら言った。
「仮初で、すぐに居なくなるかもしれない娘ですけど?」
チラッと兄神を見ながらシルフィーナが言ったが、兄神は
「気に入ったら、この夫婦を看取るまで居ても良いと思うぞ。俺はこの国に長くいるつもりだ。よし、そろそろやろう」
そう言うと兄神は手を侯爵の股間の辺りにかざした。
「少し古い細胞は取り除こう。確率を上げるために新しい細胞の生成を促して、精子を作る機能を人間の正常範囲まで上げる。これでいいだろう。3日後に上手く生成できるか様子を見に来よう」
兄神の仕事を確認するためにシルフィーナも手をかざしてみる。
さすがアレクシウスの仕事に不備は無いようだったので、今度は夫人の下腹部に手をかざしてみる。
「夫人はかなり細身ですが、排卵周期には異常は無いようです。夫人は健康体ですね」
その様子を見ていたガイが、おかしそうに言った。
「シルフィーナ様、侯爵は、パパ、とお呼びなのに、夫人は、ママ、とはお呼びにならないんですか」
シルフィーナがガイの言葉を聞いて、目をぱちくりとさせた。
「それもそうね、じゃあ、次から、ママ、とお呼びましょう」
シルフィーナとガイがクスクスと笑うのを見て、アレクシウスはガイの変化を今度は確信した。
(たった一日でどんな心境の変化があったかは分からないが、めそめそするだけの神使では無くなったようだな。ジーンにもこの状況を教えてガイのサポートに注力をするように言っておこう)と考えたのだった。
「さあ、今日の処理はこれでいいだろう。次は3日後だ。帰るぞ」
「はい、お兄様」
とシルフィーナは笑顔で答えた。
「今日は俺の城に戻るか?」
「ええ、そうします。でもパパの処理が早く終わったのでアベルとルーカスに会ってから戻りますわ」




