122.ガイの心のありか
絞り出すような声でここまで言ったガイは、嗚咽を通り過ぎて声を上げて泣き出した。
頭を撫でてあげていたシルフィーナは、もう一押しした。
「それから?」
シルフィーナの声が聞こえたようで、ガイの鳴き声が途切れた。
「それから?それからって何ですか!」
涙で声までグチャグチャのガイが怒りのニュアンスの入ったことを言った。
「定着準備はお兄様がしてくれるからガイはサポートよね。定着はお姉様がしてくれるからガイはこれもサポートよね。ガイしか出来ない事は?ガイが準備をしなければならない事は何かしら?」
「・・・」
分からないようだ。
「最近お兄様の神族と仲良くなってきた気がするわ。少し前に進めたと思うわよ」
「・・・」
「何のために神族に接吻までさせて仲良くなってきたのかしらね」
「・・・あ・・・孤立しないように」
「そう、それが準備ね。私の定着後にガイが孤立しないようにするための準備。次はガイしか出来ない事は?」
「・・・」
いつの間にか泣き止んで真剣に考えている。
ガイから少し体を離して、ガイの胸を押さえてにっこりとほほ笑んでみた。
「こころ・・・ですか?」
「うん」
「シルフィーナ様を送り出す心づもり、ですか?」
「そう、今はそれが出来てないと思うわ。どうかしら?」
「・・・そうかも知れません」
「送り出す作業ではなく、送り出してくれる心が欲しいわ。ねえ、ガイ、私、侯爵夫人の体に定着してもいい?」
本来、神のすることに神使の許可など必要ない。
だが、ガイの心の動きを自分の意志で決めて欲しいのだ。
暫く考えてガイは答えた。
「定着はシルフィーナ様の意志です。私はシルフィーナ様の意思を尊重し、それに従う立場です。ですので、私の意見はシルフィーナ様が確認しなくても良いと考えます」
「つまり?」
「私はシルフィーナ様を定着へと送り出し、その後は安全を見守ります」
さっきまで泣きべそをかいていたとは思われないほど、すっきりとした表情で堂々と答えたガイは、素晴らしく成長を遂げた神使の手本のように見えた。
シルフィーナはにっこり笑い、りりしくなったガイの顔の涙の痕をぬぐってやり
「大変よくできました、さすが私の神使だわ」
と言った。
だが、ここでいつものように抱き着いてあげたり、接吻をしてあげたりはしてあげない。
シルフィーナを抱っこしていたガイが、自分から離れて神使の礼を取った。
「シルフィーナ様、正直に申します。私はシルフィーナ様と離れるのはとても寂しく感じております。しかし、私はシルフィーナ様が誇れる神使でありたいと、今、そう考えております」
たった一つの考え方がガイを変えたということがシルフィーナにとっては感慨深い物だった。




