12.王太子
料理が運ばれてくる間、4人の人間はここに来るまでのどうやら視察の感想を話し合っているようだ。
「ガイ、お兄様に王太子の名前と特徴を聞いてきて」
「かしこまりました」
ガイが離れると4人の会話からこれが王太子かな?と思う人物が絞れてきた。
金茶の髪にやはり金茶の瞳の明らかにモリエール侯爵よりは劣る容姿の若い男だ。
観察しているとガイが戻ってきた。
「シルフィーナ様、アレクシウス様のおっしゃるには、名前はリチャード、19歳、妻帯者、金茶の髪に金茶の瞳の持ち主でアレクシウス様より容姿がかなり劣る、とのことでした」
神に容姿をコケにされているとは全く思いもしないであろう王太子は、運ばれてきたシュニッツェルをまじまじと見ていた。
大さに仰天しているようだ、顔の大きさはありそうな揚げ物だ。
しかし流石王族、皿からはみ出しそうなシュニッツェルを巧みにさばいて口に運び喜んでいた。
正直に言ったら王太子には興味がない。
シルフィーナの興味はモリエール侯爵だ。
何故か王太子より上品に見えるのは32歳と言う年齢の所為だろうか。
食べているのに顔に触れてみたが、傷は無し、あばた無し、シワも無し、金髪と同じ金色のふさふさの睫毛に青い瞳、フォークとナイフを置いたすきを見て抱き着いてみたらかなり鍛えているであろう分厚い胸板、抱き心地が良さそうだった。
「パパ」
と呼んでみてもう一度ギュッと抱き着いてみた。
溶けそうに気持ちが良かった。
「シルフィーナ様、シュニッツェルの観察はお済ですか?無くなっちゃいますよ」
アベルの声にハッと皿を見る、まだ残ってた。
切り口を見て大きいけど薄い食べ物だと知る。
4人の話を聞いていたらどうやら牛肉に衣をつけて揚げた物らしい。
美味しそうだったのでこれをアレクシウスにリクエストすることにした。
この4人、今回は流通の視察に来ていたようだ。
密輸、価格表示、出店の許可などの確認だったみたいだが、何も問題は無かったと言っている。
王太子と侯爵以外の二人は話の内容からすると侯爵の部下の近衛兵らしい。
王太子の供が3人で市井を回るのはこの国では当たり前なのだろうか?
ちょっと少なすぎる気もするのでアレクシウスに一応進言しておこうと思う。
「ここはもういいわ、行きましょう、お兄様に神殿を見て来いって言われたから寄り道しようかしらね」
王城の一角にある神殿
大きい、柱がいっぱい、中は薄暗い、神官らしい人影はない、でも奥に行ってみる。
一段と天井が高い大広間のようなところに出た。
正面に神像がある、お父様だ。
大きい像なので浮上して顔付近を覗き込んで一言
「お父様、ちょっとおじいさんっぽくないですか?いつもはもう少しお若いような気がしますけど」
「そうですね、もう少しお若いですよね」
とシルフィーナの神族が賛同してくれた。
ふと地上を見ると人がぞろぞろやってきて何やらお祈りを始めたので、しばらく見学をすることにした。
退屈なお祈りはなぜか眠くなりシルフィーナは宙に浮いたまま転寝をしてしまったのだった。




