110.好きな物
神の移動は一瞬だ。
位置を見るために中継地を決めて移動する場合もあるが、場所が分かっていれば、ほぼ一瞬だ。
ジャシス伯爵領からスタニスラガ王城まで距離があっても同じだ。
「お兄様、ただいま戻りました」
兄の朝は早いが、さすがに夜明け前に戻ってきたのでまだベッドの中に兄は居た。
いつもの如く兄の傍らに潜り込んで、兄のぬくもりに浸る。
「もう帰ってきたのか?早かったな」
「赤子たちが眠ってしまったので」
とシルフィーナはニコニコしながら話をした。
「お前にフローリアからの伝言だ。今日のお茶は予定があるそうだ。明日来いと言ってたそうだ。モンブランを用意しておくらしいぞ」
「まあ、今日は無しで、明日行けばモンブランですね、うふふ」
「モンブランが好きなのか?」
「はい、でもどちらかと言うと栗が好きなんです」
「そうか、覚えておく」
「今日の予定が無くなったので、もう眠ります。やっぱりお籠りは疲れたみたいですし」
「ああ、そうしろ、おやすみ」
そう言うとアレクシウスはシルフィーナの額に接吻をしてベッドから送り出した。
ガイは、アレクシウスのリビングでシルフィーナとガイの神気で目覚めたジーンと話をしていた。
「ガイ、今日のお茶会は無しですって。お姉様に先約があるそうよ」
「それは残念でしたね」
「ええ、でも明日はモンブランを用意して待っていてくれるそうだから、今のうちに寝貯めしちゃいましょう」
「はい」
「ジーン、邪魔してごめんなさい。おやすみなさい」
「おやすみなさいませ、シルフィーナ様」
ジーンに見送られ、部屋を移動した。
「モンブランが楽しみだわ」
ガイに眠るための抱っこをしてもらいながらシルフィーナが嬉しそうに言った。
「栗がお楽しみなのでは?」
ガイがクスクス笑いながら言う。
「そうよ、でもケーキも楽しみ。たくさん食べてもセムスのお腹はなかなかいっぱいにならないから、たくさん食べるの」
ガイに接吻をすると、ガイが思い出したように言った。
「そういえば、神界から帰ってからの回復のお休みの時に私の肩に涎を垂らしていましたよ」
「え?うそ!」
「あの時フローリア様が、涎に注意しろ、とおっしゃいましたから、たぶん」
シルフィーナの顔が申し訳なさそうになった。
「ガイ、ごめんね。今度からガイの肩にハンカチを置いておこうかしら」
困り顔のシルフィーナにガイが熱い接吻をした。
「私はシルフィーナ様に毎日接吻をしてもらっています。涎よりもシルフィーナ様の暖かさが遠のく方が嫌です」




