11.市井
またシルフィーナは眠りについたが、今回は二日で目覚めた。
アレクシウスに聞いたところ、彼は彼の神族達をかなりの勢いで諫めたようだ。
当の神族達はシルフィーナの顔をまともに見ることも出来ず俯いていた。
シルフィーナ自身、神族からの愛を受け取るのも女神の愛を渡すのも神の務めと思っているので、何をそれほど怒られたのかはあまりピンと来ていない様子であった。
寛大な女神のおかげで兄の神族たちはまたの機会を得ることになるのは後日の話しである。
「お兄様、今日は市井を見てきますわ、何か見てきて報告の欲しい事は有りまして?」
アレクシウスは少し考えたが
「楽しんでくればいい、だが、強いて言えば神殿の様子を見てきてほしいな」
「神殿は城内でしょ?市井に行くのに」
口をとがらせてふくれっ面のシルフィーナを見てアレクシウスは笑い出した。
「ではお前の食べたいものを見つけてこい、用意させるから、また女官に乗り移ったら食べれるぞ」
「女官の記憶操作で矛盾があると面倒なことになるわ、次はお兄様の体をお借りようかしら?では行ってきます」
神従を引き連れふわっと消えた妹神をと見送って
「ふふふ、相変わらず可愛いな」
とつぶやいた。
市場だ!
そろそろ昼なので商品はかなり少なめだったが、それでも新鮮な野菜、果物、魚介類が並んでいた。
神にとっても馴染みのある果物、やはり葡萄は食べたい、リンゴはシーズンではないようでなかったが梨はあった。
おお!こちらのお店にはアクセサリーがある。
お花を散りばめた髪飾りに釘付けになり、ジッと見てしまうが値札を見ても価値が分からない。
隣りのペンダントよりは高いのは分かった。
「こういうのが欲しいな~」
とつぶやいてしまうが、神霊体では身に付けれないので諦める。
ルーカスが何かを見つけた。
彼の示す方を見ると人混みに紛れてモリエール侯爵が見えた。
近衛騎士団の華やかな軍服ではなく幾分質素な身なりだが、麗しい顔はやはり目を引く。
非番か?とも思ったがどうやら誰かを警護している雰囲気だったので、ちょっと考えを覗かせてもらう。
王太子の警護?どれが王太子なんだろう?
出かける前に王族だけでも顔を覚えておくべきだったかと思いつつ侯爵の後をつける。
いや、神霊体で誰にも見えないので堂々と真後ろを付いて行く。
一軒の食堂と思える建物に入っていくと4人掛けのテーブルにきっちり4人座ったので、これが今回の同行メンバーなのであろう。
「お貴族様、今日のランチはシュニッツェルですよ、それになさいますか?」
店の女将らしい人物が貴族に臆することもなく声をかけてきた、が、このうちの一人が王族とは思うまい。
4人は少々目配せして
「ああ、それを4人分頼む」
とモリエール侯爵が言った
「シュニッツェル?なあに、それ?」
シルフィーナが後ろの神従たちに向かって聞いてみた。
「さあ、何でしょうね、この人たちを観察してみましょうか」
と神界暮らしの物の知らない神たちはどんなものが運ばれてくるのかワクワクして待つことにした。




