08
祐介のことを思い出したが、頭の中は混乱していた。
そんな時、突然絵が光りだした。
『You』が絵の中に飛び込んだ。
同時に頭の中に声が響いた「さぁ、あるべき場所へ!」
私は『You』の後を追った。
気が付くと画廊に立っていた。店の扉はしっかりと施錠されていた。
夢でも見ていたのかと呆然としていると、『You』が足に擦り寄ってきた。
私は『You』を抱え家路についた。
部屋に入ったら、玄関に写真立てがあった。
『あれ?こんなとこに写真立なんか無かったのに。』写真を見ると佑介だった。
少し照れくさそうに笑った写真の前には、佑介が好んで吸っていた銘柄の煙草。
『You』を飼って禁煙するまでの間、私が好んで喫んでいたのはこの銘柄だった。
少しでも多く佑介のことを覚えていたくて、喫煙し始めたのだ。私は震える手で煙草に火を付けた。
煙が喉を通り肺を巡り、口から吐き出される。その行為で、少し落ち着きを取り戻した。
台風の影響で風と雨音の音が激しくなった。台風の目を抜けたのだ。
私は時間の経過と共に、取り戻し記憶を少しずつ整理していった。
大学3年の秋、佑介は私の前から突然姿を消した。
理由は分からない。大学も退学し、マンションも引き払い、完全に姿を消した。
上京組は、各自の実家の住所など知らないのだ。大まかに何県かくらいは知っているが。
だから、私は佑介を探す手段を失った。
私は毎日泣いて暮らしていた。
大学も出席できない日が増え、単位も落とし、実習の締め切りも過ぎていた。
友香も那月も、雄大、康太も皆が何とか助けてくれようとしているのは分かっていた。
でもその頃の私は自暴自棄になっていた。初めて信じた人が私を捨てていったのだ、こんな悲しくて受け入れ難いことはない。見るた度に痩せていく私を皆が心配してくれた。
そんなある日、そう今日みたいな台風の日だった、私は夜中に風の音で目を覚ました。
風の音に交じって猫の鳴き声が聞こえてきた。
私が外に出ると、黒い子猫が鳴いていた。
子猫は私を待っていたかのように、私を姿を見ると擦り寄ってきた。
頭を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らす。
連れて帰ろうとすると私から距離を取る、追いかけると、また逃げる。
そして、気が付くとあの画廊の前にいた。
中には佑介の作品が飾ってあった、勿論私をモデルに描いたあの絵も。
そしてその作品の前で気を失い、気付くと自宅のベットっだった。
その後、何故か佑介のことはすっかり記憶から抜け落ちていた。
そして不思議なことに私の周りも誰一人として佑介のことを話題にしなくなっていた。
そう、まるで佑介が存在していなかったのように。