03
卒業して4年、特に懐かしいと思うほど久し振りではない気がしていた。
どちらかと言うと、あった言う間だった。
慣れない社会生活、厳しい現実、期待に満ちた未来はどんどんしぼんでいた。
京都の自然豊かな場所に大学はあった。電車に揺られながら学生時代に思いを馳せた。
美術学部ということで、枠外のヤツが多かった。それを誰も攻めないし、干渉もしない。
個々が尊重されていた。でも社会に出て痛感したのは、学生は守られていたんだということ。
駅で下車するとベンチがあの頃のままあった。
そこで友人たちと電車を待つ間、おしゃべりして笑いあった。
校内へ一歩足を踏み入れると、あちらこちらにあの頃の思い出!それが一気に流れ込んできた。
友達とふざけて写真を取り合ったこと。
夕方お酒を持ち込んで騒いだこと。大きな作品用パネルを助け合って作ったこと。
皆で回し見した雑誌。誰かが大音量で流すBGM、たばこの煙。
階段に座って私を待っている彼の姿。ネイビーブルーのつなぎ、袖を腰で巻いていた。
誰だろう?霧がかかったみたいに顔が思い出せない。
「奈央!!」
名前を呼ばれ顔を上げる。
「友香!!」
「久しぶり!元気だった?なんか痩せたんじゃない??」
「友香こそ、ぽっちゃりさんじゃなくなってる!!」
一気に学生時代へタイムスリップだ。
友香に案内してもらって校内を回っていたら、友香の携帯が鳴った。
「ごめん!適当に見てて。」
「了解」
私は一人実習室を見て回ることにした。
土曜だったから学生はほとんどいなかったが、あの頃の雰囲気は変わっていなかった。
懐かしい私達の実習室の扉を開けた。
誰もいないと思って油断していたが、人の気配。
「ごめんなさい!誰もいないと思っていたから。」
その学生の作品を見て驚いた。
あの日画廊で見た作品と同じ作風、明らかに同じ作家の作品だ。
あれだけ心乱されたのに、何故今の今まであの作品を忘れていたんだろう!
振り向いた男子学生の顔を見て更に驚いた。
「佑介」咄嗟に口から出た。