それから
それから、私達は答え合わせをした。
佑介は長い眠りのなかで、何度か私を見たと言った。
「見る時は奈央を見上げていたよ、小人にでもなった気分だった。
でも俺は何となく分かってたんだ、自分が『優』の眼で見てるって。」
「え!?見てたの?」
「寝相の悪い奈央も、いびきをかく奈央も。」
「えー!!」
「ウソウソ、俺が覚えてるのは断片的なんだよ。
覚えている奈央はいつも疲れていた。
幸せになって欲しいと祈ったのに、結果は『不幸でない奈央』だった。
俺は靄の掛かった頭で自問自答していた、『何か間違えたのか?』って。
今になって分かったんだ、俺は間違った選択をしたんだと。」
「私も覚えているよ。
もう一つの世界で佑介を忘れても、ずっと大切な物を失った喪失感だけがあった。
あの頃はそれが何かわからなかったから、日々神経をすり減らしていた。」
「『優』は俺の願いを聞き入れてくれた、だけどこの選択は間違いだと知っていたんだ。
だからきっと君を元の世界へと導いたんだ。」
「『You』は悲しみ続けるだけの私にもっと行動が必要だと教えてくれた。
受動的な生き方ではダメなんだと。」
私達は顔を見合わせて頷いた。
そして『優』『You』を見て言った。
「本当にありがとう。大好きだよ。」
そして『You』は去って行った。
ある朝、私が目覚ますとその姿は消えていた。
黒猫の精霊はきっと、別の人を幸せにするために旅に出たのだ。
その後
佑介はリハビリをし、大学に復学した。
私は佑介と一緒に暮らしながら、教師を頑張っている。
佑介が卒業したら結婚するつもりだ。
そして那月は、ロンドン支社へ栄転となった。
先日SNSでやっと彼氏ができたと写真を送ってきてくれた。
彼女の笑顔から本当に幸せになったんだと私達は喜んだ。
そして2枚目の写真を見て驚いた。
那月の彼が腕に抱いていたのは黒猫、胸にエンジェルマークがあった。




