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「奈、央?」小さく呼ぶ声、ああ懐かしい。小さくても分かる焦がれていた人の声だ。
振り向くと、佑介がこちらを見ていた。
私の目が霞む、佑介の顔が見たいのに溢れ出る涙が止まらない。
必死に目を擦する、ちゃんと佑介の表情を見たいから。
「奈央、擦らない。目が真っ赤になっちゃうよ。」
「うん。」
「うん、分かってる。」
佑介は手を広げて言った。
「おいで、奈央」
動けずにいた私の体は、その一声で駆け出していた。
私を抱きしめてくれる彼の匂いで、彼の存在を感じた。ここに生きてくれてる!
「良かった!目をさましてくれて、ありがとう。」
「こちらこそ、起こしてくれてありがとう。」そう言って彼は私の頭にキスを落とした。
「さぁ、久し振りに俺に顔を見せて。」
佑介は私の涙を拭いてくれた。
「ほら、俺の好きな奈央の笑顔見せてよ。」
私は精一杯の笑顔で彼を見た。
「ただいま奈央。」
「お帰り、佑介。」
「『You』頑張ったね、ありがとう。」『You』を探す。
佑介の横で丸くなっていた『You』を見つけた、子猫だった『You』は成猫になっていた。
まるで止まっていた時間を進めるかのように。
やっぱり『You』は『優』なんだ。
そして優と佑介が私をもう一つの世界へと導いてくれたのだ。
「佑介、ありがとう。私のことを考えてくれて、私を大切に思ってくれて。
でも貴方は肝心なことを忘れてる。
私も同じように佑介を大切に思っているの。
貴方の病気に寄り添って、一緒に乗り越えたかった。」
「そうだね、奈央ならそう言うって分ってたんだ。
でも俺はどうしても奈央には笑っていて欲しかったんだ。我儘なんだけどね。」
「次は許さなから、約束して、これからの人生は何があっても必ず二人で乗り越えるって。
二度と私を置いて行かないで。」
「わかった、約束するよ。」




