17
目が覚めて、私は夢でみたことが全て夢とは思えなかった。
きっと『You』の中に佑介の一部が入っている。
それを佑介に戻せば、もしかしたら目を覚ますのかもしれない。
私は『You』をキャリーバッグに入れて、尾道へと急いだ。
駅までおば様が迎えにきてくれた。
『You』を見たおば様は驚いた。
「優じゃない?この子、佑介が拾ってきた猫とそっくりよ。優!」
何故か『You』はおば様を知っているかのように「ミャー」と返事をした。
その晩は佑介の実家に泊めてもらうことになった。
佑介の実家は石段を上って行った先にあった。
尾道は小道や階段が多くまるで冒険している気持ちになる。
高台から見る景色は、向かいの島まで見えて懐かしさを感じる風景だった。
彼の優しい人柄は、この地だからこそ育まれたのかもしれない。
「私はちょっと用事すましてくるから、奈央ちゃんゆっくり佑介の部屋でも見てて。」
「あっ何かお手伝いします。」
「いいの、いいの。奈央ちゃんはゆっくりしてて。『You』ちゃんも出していいからね。」
私はおば様の言葉に甘えて、佑介の部屋を見せて貰うことにした。
部屋に入って最初に目に飛び込んできたのは、幸せだった頃の私の笑顔、私を描いた水彩画やスケッチだ。
一枚一枚に私の笑顔が描かれており、私はこんな顔で笑っていたんだ。
失っていた感情が溢れだした。
佑介のつなぎが置かれていた、ネイビーブルー、彼がよく着ていた。
思わず手に取り、顔を近づけると懐かしい佑介の匂い。
私を階段で待つ佑介の姿を思い出した、そうこのつなぎを着て、笑顔で手を振っていたね。
佑介、必ず目を覚まして、私を悲しませたくないんでしょう?
私は貴方に逢いたい。声を聴きたい。抱きしめて欲しい。
『You』が心配するかのように私の足に擦り寄ってきた。
私は『You』を抱き上げ話掛けた。
「大丈夫よ、ちょっと色々思い出してたの。
佑介、もし『You』の中にいるなら聞いて、待ってて絶対目覚めさせるから。」
おば様が声を掛けてくれた時には、私の顔は涙でグチャグチャだった。
おば様は少し嬉しそうに笑って「ありがとう奈央さん、佑介を想ってくれて。」
そう言って私の手を握ってくれた。
「さぁ、お夕飯にしましょ。
今日は佑介の好物を作ったわ、奈央さんのお口に合うのといいんだけど。」
食卓には、穴子飯、揚げ出し豆腐、煮物、ちりめんの大根サラダが並んでいた。
「田舎くさい料理ばかりでしょ、でも一度奈央さんに佑介の好物を食べてもらいたくて。」
「ありがとうございます。佑介さん言ってました。
『うなぎも美味いんだけど、穴子も美味いのよ。穴子飯なんか最高よ。』って、
うなぎ食べながら言うんですよ。」
私達は佑介の話を昔話をしながら、楽しい時間を過ごした。




