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  私が最初の実習で教室が分からず困っていると、佑介が声を掛けてくれた。

「日本画の新入生?」

「そう、あなたも?」

「そう、俺も日本画専攻、野田佑介です。よろしく!」

「私は鹿野那月、よろしくね。良かった、実習室が分からなくて困ってたの。」

「かなぁと思って声かけた。」

第一印象は、優しそうなちょいイケメン。

でも佑介を知れば知るほど、惹かれていった。

その想いは日々募っていったわ。


 佑介の自己に対するストイックさ、それでいて他者には向けるさりげない優しさ。

自然といつも佑介を目で追っていた、だから嫌でも気が付いてしまった。

佑介がいつも奈央を目で追っていたこと。

 私は奈央の大らかさと寛容さに惹かれる反面、許せなかった。

自分に対しも他者にも甘い。

でも、そんな奈央だから佑介が惹かれていることも分かっていた。

 

 私だって揉めたい訳では無いから、必死に他の人を見ようと努力したわ。

でも結局佑介以外は目に入らなかった。

 

 私は苦しんでいる間に、二人は付き合っていた。私は奈央に嫉妬した。

佑介の横でいつも佑介に愛され甘えていた奈央に。

佑介は揺るがない、だから奈央ならと、何度となくコンパに誘った。

でも奈央も揺るがなく、どんなに頼んでも来ることは無かった。

私の完敗、二人は何があっても揺るがない、そう思っていた。


 そんなある日佑介が姿を消した。

私は教務課の知り合いに頼みこんで佑介の実家を調べて貰った。

実家まで押し掛けて、佑介の病気のことを知った。

優越感に浸ったわ、だって初めて奈央以上に佑介のことを知ったんだもの。


 私は佑介と定期的に連絡を取るため、奈央が大学を休んでいることを伝えた。

彼のことだ、きっと奈央のことが心配で私に連絡してくるはず。

そこから逆転を狙えばいい、そう思っていた。


 思惑通り、佑介は定期的に私に連絡してきた。

もしかして、少しでも私を見てくれるんじゃないかと、期待した。でも期待しただけ無駄だった。

佑介は奈央が壊れていく様子を聞いて、自分の体以上に心配していた。

いっそ奈央に新しい彼氏ができたと嘘を付ければ良かった。

でもそんな嘘も『奈央が幸せならそれで良い』と辛くても笑って言いそうな佑介を思うと出来なかった。

だから、『少しずつ元気を取り戻してるよ』と嘘を言った。実際の奈央はボロボロだったわ。

でも佑介はそんな嘘を信じて安心していた。



 私は、佑介の入院前に自分の気持ちを打ち明けた。

「私はずっと佑介のことが好きだった。お願い一度で良いから抱いて欲しいの。」

佑介は迷うことなくはっきりと言った。

「ごめん、俺は今でも奈央が好きなんだ。

だからそんな気持ちを持ったまま那月を抱くことなんてできない。」


 私は思わず「それなら奈央にばらすわよ。私と連絡を取り合っていたこと、病気のこと。」と脅した。

佑介は酷く傷付いた顔で言った。

「俺のこと騙したのか?奈央の親友だろ?」

「そうね、佑介が奈央と付き合っていなければね。

本当のこと言うとね、奈央はボロボロよ。事実を知ったらどうなるかしら?」

私は完全に狂っていた。


 しばらく佑介は黙って考えていた。

そして真っ直ぐに私を見て言った。

「脅されても抱けないものは抱けない。抱きたくもない。」

「奈央に言って良いのね。」

「良いよ。好きにすればいい。」

「分かったわ。」


 佑介とはそれっきり、流石の私も連絡できなかったわ。

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