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那月に電話すると「外で話す内容でもないし、うちに来ない?」と誘われた。
卒業して初めて那月の部屋へ入った。
無駄なものは無く、一つ一つの家具が役割を持って並んでいた。
洗練された那月らしい部屋だ。
「ちょっと待ってて、おつまみとビールで良いかな?」
「ありがとう。」
「その辺に適当に座ってて。」
待っている間、ふと壁に飾られた写真に目が行った。
その空間だけ不協和音のようだった。写真には佑介が写っていた。
これは1年の夏休みに皆で琵琶湖へ行った時の写真だ。
あの時は佑介と私はまだ付き合っていなかった、私が佑介との距離感に戸惑って頃だ。
那月が写真を大事にしていることが伝わってきて、那月は気持ちを隠す気がないんだと悟った。
連絡を取っていたのは那月だ、私は確信した。
冷えたビールと那月が作ったおつまみが出てきた。
冷蔵庫にあるもので簡単に美味しく作る、それが那月だ。
「どうぞ、有り合わせで悪いけど。」
「流石、那月ね。あんな短時間でこんなに美味しそうなおつまみ作っちゃうなんて。」
口にしてみて思ったより含みを持った自分の言葉に驚いた。
那月が出してくれたのは地ビールで、苦味が少なくのど越しが良かった。
緊張して重くなっていた口は、冷えたビールのお蔭で少し軽くなった。
私は意を決して口を開いた。
「この前佑介のお母さんに会ったの。入院直前に同級生の女の子が訪ねてきたって言ってた。
それって那月?」
「ええ、そうよ。」 那月はあっさり認めた。
「佑介に逢いに行ったのは私。多分、最後まで連絡を取っていたのも私よ。」
「なんで、なんで教えてくれなかったの?私があんな逢いたがってたのに。」
「だって、佑介が奈央には言わないでって言ったのよ。
でも一番の理由は祐介を独り占めしたかったからかな、優越感を感じていたのよ。」
ショックを受ける私に那月は「少し長くなるわよ。」とゆっくり話始めた




