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それから私は休日を使って尾道へ向かった。
彼の実家には駅から電話した。
本来もっと前に連絡するのがマナーだと知っていたが、断られるのは怖かった。
どうしても彼に逢いたかった。どんな姿でもいい、彼に一目逢いたかった。
私がこの世界に戻ってきた理由はきっと『彼』だから。
5コール目で女性の声「はい、野田です。」
「私、佑介君の大学の同級生の三苫と申します。
大変不躾ですが、佑介君のことを伺えればと思い、尾道にきています。
何処かでお話伺えますか?」
「佑介の同級生なの、わざわざ来てくれたのね。ありがとう。
今からあの子の病院なのよ。良かったら一緒にどう?」
予想していなかった優しい言葉だった。
私は誘われるまま病院の前で佑介のお母さんを待っていた。
おば様は私を見た途端「もしかして、奈央さん?」
「はい、そうです。」
「そう、あなたが奈央さん。佑介がいつも眺めていたのよ、貴方を描いたクロッキーやデッサン画を。
『彼女?』と聞くと恥ずかそうに、『そう大事な子だよ。』って言っていたわ。」
佑介は、様々な私を知っている。どんな一瞬も描きとめようとしていた。
私は恥ずかしくて顔を隠す、そうすると今度は寝顔を描かれた。
「佑介は、大学3年の初夏病気が発覚してね。検査して手術が必要と言われたの。
何とか有名な先生に執刀をお願いできて、難しい手術も成功したんだけど、何故か目を覚まさないの。
もう4年このまま。」
病室の前にたった、プレートに『野田佑介』と書かれている。
「さぁ、どうぞ。話しかけてやって。」
顔を見ると私が知っている佑介より痩せてはいいるが、懐かしい佑介の顔だ。
やっと逢えた。私は佑介の頬に手を当てる。
伸びた髭が少しチクチクする。病院の匂いに交じって佑介の匂い。
「佑介やっと逢えた、逢いたかったよ。
なんで全部自分で背負っちゃうかな?私達は分け合うべきだったんだよ。
どんなに辛くても私は一緒に背負いたかったよ。」私の涙が佑介の頬を濡らす。
「でも、そんな佑介の優しさが愛しいよ。」




