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勇者の憂鬱。

作者: 網野雅也

「勇者様……よろしくお願いします」

「はい」

「お仲間の方もお気をつけて」

「お任せください、きっちり始末してきます。報酬の準備お忘れなく」

 俺はライム。近在の村人達から勇者と呼ばれている。

 今から村人に頼まれ、洞窟をねぐらとする魔物を倒しに行く。

 俺は馬に打ち跨る。その俺の両側には仲間がいる。

 剣士ハッサンと賢者マールだ。

 ハッサンは赤い鎧を身に纏い、腰に大剣を帯びた図体のでかい浅黒い肌を持つ男、マールは薄く桃色がかった白地のローブを身につける鼻筋の通った白皙の美女だ。


「何しにきたんだ? 」

 一つ目の魔物が洞窟に居座っていた。問答無用で……

「うわ……いきなりか!」

 ハッサンが有無を言わさず切りかかる。大きな剣は唸りを上げて、魔物に打ち下ろされる。油断して初動が遅れた魔物は真っ二つに裂けて一瞬で絶命した。

「血……」

 俺は傍にいたが、派手に飛び散った魔物の血に怯えて後ろへ飛んだ。

「悪い……」

 ハッサンは無表情に謝る。

「勇者、血を見たぐらいでいちいち驚かないでください」

 マールが呆れたように俺にダメだしをした。

「いやぁ、慣れないんだよ、中々な」

 俺はこのパーティで最も勇敢な剣士勇者ということにはなっている。

 しかし、俺はその名声を受けるに値しない臆病ものだ。

 どちらかと言えばハッサンの方が向いているとは思う。

 俺は元々勇者にはなりたくなかったんだ……


「あの~、このパーティの長は誰が務めます? 」

「……誰にしようか」

「…………」

 パーティ結成の際、俺達はリーダーを決めるため話し合った。このパーティの長は、いずれ、魔物との戦闘を繰り広げているうちに、その戦功を目撃した者達によって勇者と呼ばれるようになる。それを案じてこうして先に議論していた。勇者とはこの大陸では最も名声の高い呼び名だ。つまり、言い換えれば民衆や王族達から一身に期待と注目を浴びる存在になるわけだ。

「俺は嫌だ……」

「お、俺も嫌だよ……」

 寡黙なハッサンがようやく重い口を開いたと思ったら、いきなりリーダーの座を拒んだ。

 俺も勇者にはなりたくないので、ハッサンの言下に否定した。

 何でだよ……

 ハッサンは俺達の中で最も魔物を倒すのに貢献し、止めを刺す回数の多い剣士。

 勇者としては、最有力候補だったのに……

「えぇ、それじゃ私になれって言うんですか? ハッサンそんな大きな体して女性に押し付けるつもり? ライム、あなたも……どっちも情けないですね。どっちも男性なのに#%●×ついてるんですか?」

 物腰柔らかいマールだが、その口調はあけすけに包まず思ったことを口にする。

 その中に一片の悪意は含まれていないが、時々辛辣な言葉が小さな唇から紡ぎだされる。

 確かに今は彼女の言うとおりではあるんだが……嫌なものは嫌だ。

 俺も剣士としての腕はハッサンにも劣らない。

 実力では拮抗していた。ゆえに、ハッサンか俺どちらも勇者になりえる素質があった。

 だが、俺は……臆病者なんだ……勇者となれば、魔物を率先して倒しに行かなくてはいけない。

 止めを刺すのも俺がやらなくてはいけなくなる。

 ふだん、後ろからボーガンを撃ったりしてサポート側に俺は回っている。

 なぜなら、接近戦だと醜悪な魔物とかなり近い位置で戦わなくてはいけない。

 臆病な俺にはそんなポジションでの連戦は精神的にもきついものがある。

 それに加えて、近くだと魔物の返り血を浴びてしまう。

 俺は血をあまり近くでみると、顔面蒼白になり気分が悪くなるんだ。

「あ、あのさ……俺無口だろ……頭の回転もよくないし……それに何より目立つのが嫌でさ……」

 マールのきつい眼差しと気まずい雰囲気の中、ハッサンが歯切れ悪く訥々と言った。

 彼は強いんだが、寡黙で大人しく、そして、恥ずかしがりやなところがあった。

 あまり人目を一身に浴びて、村人たちとの交渉を率先してするタイプではなかった。

 俺もそれが分かってて強くは言えないところがあった。

 ハッサンは間を開けて一瞬俯いた後、更に低いが良く通る声で話した。

「やはり……勇者にはなれない……ただ……人目があるときはライムが……それ以外は俺が率先して魔物を倒す……これで……どうかな? ライム……頼めないか? 」

 俺は迷ったが、ハッサンは寡黙に押しだまっている。彼は恥ずかしがりやだが意志は岩のように固い。そうそう意見を曲げるような奴じゃなかった。俺はしぶしぶだが、了解せざるをえなかった。

そんなこともあって、ふだんはハッサン任せでやっていても、村人が通ると俺がこわごわ止めを刺しにいく。





 

「みんな今日は頑張りましたね。金が500ジル増えました。これだけあれば、ちょっと豪奢な宿屋に泊まれますね」

「うん、豚の丸焼き、金箔のついたお吸い物、高級なワイン、何でも頼めるぞ」

「まぁ……無益な殺生で得た血塗られたお金ですけど……」

「…………」

 和気藹々とした空気が一瞬で薄ら寒いものへと変わる。

 ハッサンじゃないが、俺まで無口な人間になってしまう。

「さぁ、行きましょう! 」

 言った本人はすぐに切り替えて、鼻歌を口ずさみ先に立って町の中心へと駆けて行く。

「なぁ……マールって変わってるよな? 」

「うむ……」

 残された二人で会話を弾まそうと試みた。

 話題の中心をマールに定め水を向けてみる。

 ハッサンはあまり自分から話そうとはしない男だ。

 だが、俺はそんな事は気にせず、マイペースに続けた。

「マールって美人だけど、なんていうか率直で……時々落ち込むときもあるんだけど、あれはあれで可愛いと思わないか? 」

「…………」

 またハッサンは口を閉ざした。

 この話題はここまでかと……と思い、違う話を持ちかけようとすると、ハッサンが思い出したように、

「素敵な女性だよ……」

 特に声色を変える事無く、閉じているのか開いてるのか分からない瞳を地に落として答える。

「やっぱりそうだよな」

 少し調子が崩されたが、いつものことなので無難に答え、二人はマールの後を追った。

 

 

 

 月日は刻々と過ぎて、俺達の絆は日増しに堅いものへと変わって言った。俺は日々の生活や戦いの中で、臆病なりにもそれなりのやり方で勇者を務め上げた。

 だが、この頃パーティの絆とは別に、胸のうちで燻っていた思いがもう押さえ切れなくなっていた。

  

 魔物との一戦を終えたある日の昼下がり、柔らかい日差しに包まれた草原に三人は並んで横たわっていた。俺はこの時、周りの安穏とした空気の中で、異様なほど緊張していた。

「マ、マ、マ、マール、今日はいい天気だね」

「そうですか? 曇ってますよ♪」

 にこやかだが、マールは否定して正した。実際雲ってはいた。

何を言っているのか自分がどこにいるのかさえ、把握するのに時間を要するほど思考は硬直していた。だけど、次に投げかける質問は予め決まっていた。

「それはそうとさ、ま、ま、ま、マールは俺の事をどう思う?」

 俺の人生を左右しかねないこの問いを、崖から身を投じる思いでやっと口にする。

 マールの向こうではハッサンが寝ている。気のせいか耳がぴくんと動いたきがした。だが、その存在は不気味に間を開けて黙り込んだマールから受けた緊張の波に溶けていった。

 俺は怯えていた。どんな率直で正直な答えが帰ってくるか見当もつかない。

「良い仲間だと思っています。いつも助けてもらっています」

 無難な答えが帰ってきた。俺は正直ほっとしたが、反面落胆もしていた。

 仲間どまりか……しかし、なんとも思っていませんとか言われるよりはましだと前向きに考えた。

 そして、なんとなしに、軽い気持ちで続けて聞いてみる。

「じゃハッサンはどう思う?」

 そう言ったのち、ハッサンの様子を俺は窺っていた。何か寝ながら喘いでいた。寡黙で照れ屋で純情なハッサンは、たぶん緊張のあまり生唾を気管につかえたんだろう。

「ハッサン好きですよ。男らしいし、頼りになりますし、恋人にしたいくらいです♪」

「え……?」

 意外な展開に俺は言葉を失った。てっきり俺と似たような答えが帰ってくるとばかり思っていた。言っちゃなんだが……寡黙で無骨でゴリラのような毛深く角張った顔のハッサンと、あけすけで天然で朗らかに笑う笑顔は女神にも思えるマール。対角線上にあって、とても結びつけることができなかった。俺は予想外の答えに脱力してハッサンに目を向ける。背を向けている上側の頬が朱色に染まっている。ハッサンは赤面しているようだった。


 俺は臆病なため、今まで聞けなかった。オブラートに包むことをしないマールの物言いが怖いせいもある。だが、やっと口にしたんだ。俺はマールが好きだ――と繋げるための前段階の質問を……

 しかし……その思いは儚くも打ち砕かれた。ハッサンの野朗に……


 奴はその一件以来、マールへそれとなくだが自発的に近付き始めた。

「マ、マール、き、来てみなよ……綺麗な花が咲いてるよ……」

「どれ~、あ、やだ、ケムシがついてるじゃない、もっと選んでから声かけてください!」

 マールは腕を組んで、薄い桃色の唇を少しゆがめて嗜める。

「ハハハ……ご、ごめん」

「じゃこちらの白い花は?」

「綺麗ですねー、こちらの花も……」

 ハッサンは目尻を下げっぱなしで、頭に手をやりはにかんだように笑う。髭面のでかいその顔が俺にはやけに薄汚く映る。糞~、野朗、図体でかいくせに、俺のマールに! (関係ない) 

 俺は憤りはしたが、すぐに気を静めてその場を離れた。テントの中で一人悶々とした時間を過ごす。俺は自分で言うのもなんだが、頭は回るほうだ。どうにかして、奴から彼女の目を俺に向けさせることができないか考えた。その結果、奴を葬るしかないと意気込んだ時もあった。しかし――相手は強いしごつい。臆病な俺が人殺しなどできるわけはない。

  

 日増しにドス黒い炎が俺の身を焦がし、俺は飢えた狼のように乾き続けていった。

 それでも俺は一線を越えるようなことはしなかった。いやできなかった。臆病であるがゆえに、悪辣な行為に走る前に良心が割って入る時間の余裕を残していたからだ。そのため、内に暗い影を落しつつ、俺はそれでもパーティの輪を崩さないよう賢明に尽力しピエロに甘んじる。

「ハッサン、はい、アーン」

「あ、ども、うん、おいしいよ!」

 目の前で繰り広げられる、鬼畜とも思えるハッサンの所業。

 しかし、俺は堪えた。時々後ろからナイフを投げつけたくなった時は、テントを出て外で深呼吸をした。それでも押さえ切れないときは、弱い魔物たちの集団を襲い手当たり次第惨殺し、一時の強者の快楽に身を委ねて紛らした。そんな事でしか増長する殺意を押さえ止めることができなかったからだ。

 しかし、それもいつまでも続かなかった。

 

 ある日、そんな気晴らしを終えて、街中を単独で歩いていた。

「勇者よ! 王さまから命令が降りた。北の山に城を構える魔王を討ってほしいとのことだ、ただちに向かって欲しい。報酬は100万ジルだ。頼む、この大陸の運命はお前の双肩にかかっている!」

 馬に跨る騎士から渡された王さまの書状。

 お鉢が回ってきたのだ。日々の戦功を積み重ね、その名声は当等王の耳に届き、魔王討伐の任を言い渡されることになった。

「100万ジルすごいじゃない」

「うむ」

「しかし……魔王か……」

「だよな~……」

 俺は臆病なので、尻込みをしていた。

 さすがのハッサンも魔物の頂点に立つ魔王が相手とあって悩んでいるようだ。

「行きましょう! 100万ジルよ! それさえあれば一人33万ジルとしてもハッサンと合わせたら、66万ジル、結婚費用も大きな家もその後の結婚生活も子供の養育費も賄えるわ、ねーハッサンやりましょう! 」

 もう完全に俺はないがしろだった。二人の世界に浸っている。顔を見合わせ赤い顔をするハッサン。

 そのハッサンのごつい手を両手で包み、一身に未来の夫を見つめるマール。

 ハッサンは腹をきめたようにマールの手を握り、

「よし、行くか!」

 ここの長は俺だぞといいたかったが、彼等の耳に今更俺の声は届かなかった。

 俺はこの頃からマールへの思いが急速に萎み諦めはじめていた。

 二人ののろけを目の前で見せられるたび、俺の中に燃える黒い炎は冷や水を浴びせられ徐々に小さくなっていった。

 俺は生まれて初めて敗北の味を知ったのかもしれない……

 


「おりゃ~!」

「マール横へ飛べ! 」

「死ねや! 」

 魔物の群れをなぎ倒し、屍の山を積み上げていく。

 俺達も深手とまではいかなくとも、無傷ではない。

 鎧は凹み、体中の表皮が割けて血が服滲んでいた。剣は赤く染まり無数の皹が入っている。

 ただ、3人の中でもマールは無傷に近かった。

 ハッサンと俺が命を賭して彼女を厚い壁のように守り続けたからだ。

 そして、ようやく最上階の魔王の間にたどり着いた。

 漆黒のローブを身に纏った魔王が、悠然とこの間に入ってきた俺達を見下ろしていた。


「よくきたな、勇者よ!」

「は、はい……来てみました」

 つい臆病が顔をだし、及び腰で力なく俺は呟く。

 かぼそい声は魔王に届いているかどうかも怪しかった。

「ははは、なんだその情けない言い草は……ウワハハッハ」

 勝ち誇ったように魔王が哄笑した。

 高らかな笑い声が魔王城の吹き抜けの天井に吸い込まれていく。

「…………」

 ハッサンは相変わらず寡黙だったが、歯をむき出してマールの前に立ち剣を斜に構えている。

 これが……守るべきものがある者の強さか……などと考えていると、不意にマールがハッサンの後ろから魔王の真正面に躍り出る。

「魔王、これまでよ、覚悟しなさい! 」

「生意気な小娘だ……む……? 」

 魔王はマールが杖を掲げて、放った勇ましい言葉に苛立ちを覚え表情は強張った。しかし、次の瞬間、フードの下に覗く青白い顔は見る間に弛緩していく。遠目に若干震えているようにも見える。

「その声……まさか……マールか?」

「……気づいたようですね……」

 


「魔王、いえ、シリア……お久しぶり……」

「本当にマールなのか……その姿は……」

 魔王とマールはかなり接近して、何やら話していた。

 俺とハッサンは訳が分からず、お互い顔を見合わせ首を傾げる。

「分かりました……元の姿に……」

 マールはそう呟き、一瞬、俺達に躊躇ったような瞳を向けたがまた前を見る。

 そして、次の瞬間、目の前で信じられないことが起きた。

 見る間に……マールの姿が変わっていく。

 それは俺たちにとって、地獄絵図のような光景だった。

 眩いばかりの白いマールの容姿が、漆黒に染められていく。

 その輪郭は、以前の柔らかい曖昧な線とは違い、薄暗いこの空間にくっきりと浮かび上がる。

 元の細身は変わりないが、漆黒の翼と体表がこれまでの像を打ち消していた。

「そんな……お前マールなのか……」

 向こうから情けないが悲痛に満ちた声が真っ先に漏れ聞こえる。

 ハッサンは剣の切先を地面に落とし、マールの変わり果てた姿を眺めながら体を震わせていた。

 俺は鳴りを潜めて、固唾を飲んだ。

 

「あなたの事本当に愛していました……でもあなたは変わってしまった。大陸制服の野望を捨てて、平和に甘んじるあなたの情けない姿はもう見たくない……」

「はぁ……? んん……」

 魔王へ歩を進めながら、異形のマールは驚くべき言葉を吐いた。

 膝を地につき、放心していたハッサンからまた気弱な声が漏れる。

 これはさすがに……俺は口にはしなかったが、大体の事情を把握し始めていた。

 二人の男と一人の女の間に奇妙な三角が形を成す。


「お前どれだけ、探したと思ってるんだ!?」

「あなたが……腑抜けてるから、嫌気さして出て行ったのよ!」

「それでこの男と引っ付いたのか? 」

 魔王の玉座の前で人間と魔族が参加した口論が始っていた。

 ハッサンはあの異相の姿を見せ付けられても、魔王の女房である事実をたたきつけられても一向に引く様子を見せず、その輪に断固として居続けた。

 俺は魔王の間の隅にある黒曜石のベンチに腰掛けて欠伸をした。

「今回だって、あなたがぼけーっとしているうちに、目障りだとか難癖つけて、人間達が調子にのって刺客を差し向けたのよ! 」

「俺はもう奴等と戦いたくないんだ……分かっておくれ! 」

「マールを愛している……マールを愛している……マールを愛している……」

 夫婦の諍いの中、ハッサンは一人どこをみるわけでもなく宙に視線を置いて、同じ言葉を連呼していた。俺には……崩れ落ちそうになる過去の灯火を消すまいとする足掻きに見えた。

「俺はマールを愛しています。お父さん僕に娘さんをください!」

 ――が、ハッサンは壊れかけながらもマールを求める様子を見てると、その思いはまだ硬いようだ。

「お前な、なに言ってるんだ……? 」

「私もハッサンを愛しています」

 マールにハッサンの思いが通じたのか……

 二人は雁首並べて、魔王に許しをこうような熱い視線を向けた。

 魔王は露骨に苦しげに顔を歪めた。

 しばらく、三人の会話は続いていた。

 

 

 向こう側が静かになったかと思うと、俺の側にハッサンとマールが向かってくる。

 マールは元の姿に戻っていた。

「勇者!」

 爽やかな笑顔を浮べ、俺を力強く呼んだのはハッサンだった。

「なんだ?」

「俺マールと結婚するよ、魔王は分かってくれたらしい。それに部下を俺達にほぼ倒され失った今、もうこれ以上ここにいても仕方ないということで、山奥に残り少ない部下を連れて隠居するそうだ」

 俺は咄嗟に魔王がいる方へ視線を向けた。

 疲れたような顔をして、猫背で玉座に座っている。

 二人の間に繋がられた、断ち切れそうにない見えない鎖に諦めざるを得なかったようだ。

「俺はここに住むことにしたよ」

「そうかお幸せに……」

「ハッサン……」

「マール……」

 のろけが始る前に一言残して俺はそこを走り去った。

 

 それから数ヶ月後――、俺はある村に滞在している。

 そこで知り合った女の子と今は結婚を考えている。

 風の噂では、マールは魔族再興に向けて自らが魔王となり魔物の残党を集め勢力を増強しているときく。マールに横には黒い甲冑をつけた人間の戦士がいつも傍にいるということだった。

 



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