ワッフルサンド
ワッフルサンドが食べたいというマレの希望を叶えるため西葛西に向かった。
私の家とマレの家の中間地点を集合場所にしていたので、そこから電車で一本、数分で着く。
渋谷にも専門店があるのでどちらが良いか尋ねたところ、移動時間が短い方が良いとのことだった。とにかくたくさん話したいらしい。
うん、いっぱい話そうね。マレ。
最寄りの駅からは数分掛からずに着けるそのお店は、店外におすすめやメニューの展示がたくさんあって、お店に入る前から「あ、これおいしそー」「これどんなんかなぁ?」なんて感じで盛り上がれて気分が上がった。
店内は落ち着いたカフェというよりは明るいケーキ屋さんみたいなイメージだ。
じっくり語らうというよりはにぎやかにおしゃべりするイメージだが、その明るさは今日の私たちにとっては良いもののように思えた。
ワッフルサンドを食べにきたのだが、ショーケースに並んでいるケーキを見ているとそちらも食べたくなる。
マレも色とりどりのケーキに目を輝かせている。気持ちも一層高揚しているようだった。
人気店なのでそれなりに混み合っていたが、待たされることなく席に通された。近くの席には四十代くらいの女性ふたり組と、私と同世代くらいの女性ふたり組。それぞれまあまあ通る声でおしゃべりに夢中だ。
騒がしさも、これくらいあった方が良い。
注文後程なくして営業されたのは、ワッフルサンドというよりはワッフルバーガーといった姿。
ふたりでシェアするからとフルサイズを頼んだら想像以上に大きくて、「食べきれるかなぁ」と困ったように言いながらも、マレは満面の笑顔で嬉しそうだった。
マレが嬉しそうだと私も嬉しい。
バレエダンサーは体重管理がかなり厳しい。
自ずと食事も厳しく管理される。
留学中は寮生活のマレは、完璧な食生活を得ていたはずだ。
欲のまま好きなものを好きなだけ食べてしまえば、その業の分だけあとで苦労するのは自分自身だ。
そこは気にしてあげるべきだと思うが、今日この場に関してで言えば、そういうのもすべて抜きにして、純粋に心を豊かにすることのみに特化して良いと思っていた。
今日はマレが溜めているものを、空っぽにするまで話すんだ。もしかしたら、数年分に及んで溜めたものを。
フルサイズのワッフルバーガーはかなりのボリュームだが、それでもその時間を埋めるパートナーとしては心許ない。
ほどほどのタイミングで、おなかに余裕があればパフェを追加しよう。
ここはフルーツを売りにしているから、フルーツも食べないともったいない。結構な金額になってしまいそうだが先日バイト先で大入り袋をもらえた。
中には一万円が入っていたから、それを使えば大丈夫。