【幕間】 祷 cor primária do céu 15
ガブリエル一行は主目的である衣装が置いてある倉庫へと行った。
色とりどりの衣装や生地・ストーンなどの素材、アレゴリアなどで使われるものと思しき彫像のような装飾物が整理はされていながらも一見乱雑に保管されていた。
裁断台に載せられていたスパンコールがちりばめられたマントのような生地は一部切り取られている。過去に使用した衣装の一部を素材として再利用したのだろう。
「え、これ発泡スチロール?」
とてもリアルなガーゴイルの石像は、アレゴリアに接続するのだろうか。設置面と思われる箇所は何の処理もされていなく、白い素材が剝き出しだった。
バンド、パシスタ、バテリア、カザウそれぞれのポジションの観点からも、持ち帰る衣装選びに携わるつもりだった一同は、実際の物量や重さ、質感や色などを直接確認し、一部動画や画像などをチームの役員のトークグループに送り、自国で待つメンバーの意見なども聞きながら、何を持っていくのかを決めた。
リスト化してガブリエルに渡すと、帰国の時までにピックアップし、ある程度荷造りして運べるような形にしたうえで、空港まで持って来てくれることになった。
かさばるものは分解し素材化して、できるだけ多く持ち帰れるようにしてくれる。
至れり尽くせりの対応に、現地の五人は当然だが、遠く日本の地からも、ビデオ通話で代表他特にガブリエルと親交の深かったメンバーを中心に、創立メンバーも一堂に会し日本のその場でも大騒ぎしながらガブリエルにお礼を言っていた。
その様子もライブで配信されていて、ガビと繋がっているブラジルのサンビスタたちも、動画にたくさんのリアクションをしていた。
主目的を比較的早い段階で終えた一同はまさにサンビスタによるワークショップやレッスン、交流など「サンバ留学」といった態の日々を過ごしながらも、一般的な観光もこなした。
サンパウロからリオデジャネイロへ。
リオのキリスト像の見物はもちろん、コパカバーナの美しいビーチを体感し、世界遺産のシュガーローフでリオの町を一望してきた。
高度に酔い頭痛を感じていた慈杏も、その景色を見ているときは痛みを忘れていたようだった。
長時間の過酷なバス移動に耐え、マウナスはアマゾンの熱帯雨林へといった。
ガブリエル他彼が手配したスタッフのアテンドを受けながら、アマゾン川クルーズに参加し、ピンクイルカやわになどの野生生物を観察した。
自然の雄大さにはただただ吞まれるばかりだった。
クルーズのアテンダーがジャガーの恐ろしさを説明する際の持ちネタがあり、ポルトガル語を理解できる乗客は笑っていたが、日本人一行はガブリエルの翻訳による説明を受けても全く理解できなかった。
「笑いの感性が違うのかな」
祷と穂積は小声で会話していた。会話は軽い冗談混じりに進んだが、文化の違い、感覚や感性、価値観の違いは、把握しておくべき課題だなと祷は心に刻んでいた。
飛行機、バス、タクシーを乗り継いでイグアスの滝も観た。
パンタナール湿原でカピバラやカイマンも観た。
ブラジリアの博物館でブラジルの歴史や文化にも触れた。
サルバドールでサンバの起源も肌に感じてきた。
多少駆け足だった部分もあったが、旅行として見てもかなり充実した内容だっただろう。