【幕間】 祷 cor primária do céu 6
そんなこんなで、有志を募ってブラジルに渡る『ソルエス使節団』が編成された。
地球の裏側に三週間も滞在する決意を表明したのはこの五名だ。
フリーのインテリアプランナーでビキニのような衣装に羽根飾りをつけた(「タンガ」と「コステイロ」)ダンサーである『パシスタ』で、打楽器隊の女王というチームに唯一存在する『ハイーニャ・ダ・バテリア』の経験も持つ文樹茉瑠。サンバネームは「マルガ」
創立時はまだ幼かったがガブリエルから直接指導を受けた直弟子でもある。
仕事を一通り片付け、娘である同じくダンサーの瑠衣(サンバネーム「ルイ」)は再婚相手のスルド奏者奏太(サンバネーム「ソータ」)に任せ、三週間のブラジル行きを決意した。
ベンチャー系の広告代理店勤務でクリエイティブディレクターの地位にある弧峰慈杏(サンバネーム「ジアン」)。
エスコーラを象徴する『パビリャオン(バンデイラ)』を司る男女のペアダンサー『カザウ』で、バンデイラを掲げる役を担う『ポルタ・バンデイラ』だ。
バンデイラは旗、パビリャオンは国旗のような象徴旗を意味する言葉である。
エスコーラのバンデイラは代表ですらおいそれと触れることはできない。
『カザウ』はそんな重要なバンデイラに携わるエスコーラの中でも特別な存在である。
サンバカーニバルに於いては『カザウ』不在は減点の対象となる。
男女ともディズニーのプリンスやプリンセスのような、重厚感ある衣装を身に着けたダンサーだ。
ジアンもまた、創立時から両親とともに在席していて、ガブリエルを師事した子どもだった。
忙しい仕事で立場もあるが、同じく『ソルエス』に所属している同僚で後輩、仕事上のチームメンバーでもある、デザイナーでディレクターの渡会類(サンバネーム「るいぷる」)と、コピーライターでディレクターの百合藍司(サンバネーム「アイジ」)が育ってきていることもあり、直近案件のクリエイティブディレクターをふたりに任せてみるという話がまとまった。
その代わり、ジアンには南半球屈指のサンパウロ美術館や、ラテンアメリカ独自の感性によるグラフィックやプロダクトを観てセンスの幅を広げながら、できれば現地とのなんらかのつながりを持って帰るというミッションを課されていた。
ジアンの元大手広告代理店在籍時の先輩で、独立の際にジアンを引っ張ってくれた社長の新町からは、「長生きをすれば多くを知る。旅をしたらそれ以上を知る」というアラブのことわざを体現して来いと言われていた。
今回唯一の男性メンバーはギター奏者の松本啓介(サンバネーム「マッサン」)。
決して治安が良いとは言えない現地に於いては、もちろんガブリエルに加え彼が用意した現地の仲間に頼ることになるのだが、来訪者側の唯一の男性として、それなりに女性陣を護る役も担わされている。
メーカー勤務の彼は振休がたまっていて会社から休むように言われていたことも追い風に、調整に調整を重ねなんとか三週間に及ぶ期間を確保することができた。