【幕間】 祷 cor primária do céu 5
サンバ関連以外にも高い技能やアイデアを持ったメンバーが揃っている『ソルエス』は、資源の乏しさを工夫と知恵と技術で補っていた。
今年『ソルエス』が取ろうとしている施策は、創立時に講師を務めてくれた今はブラジルに戻っている日系ブラジル人ガブリエルの伝手を使い、リオのカーニバルの一部リーグ所属のエスコーラから、今回のリオのカーニバルで使用した衣装を譲り受けられることになったのだ。
サッカーで言えば、日本のJリーグのチームが、イタリアのセリエA、ドイツのブンデスリーガ、スペインのリーガ・エスパニョーラを擁す世界四大リーグの中でももっとも強いと言われているイギリスのプレミアリーグの優勝候補チームからリソースを譲り受けるようなもの。
日本のリーグが低いわけではないが、やはり世界最高峰となると掛けている労力と能力と資力の段階が違う。細部に別格の差があることだろう。
手筈は順調に整えられていったが、ひとつ誤算があった。
じわじわ進行する円安とエネルギー費高騰の影響も受け、元々高額だった送料が、看過できない額となっていた。
送料を込みにしても先述の価値を加味すれば高いものではなかったが、あくまでもそれは絶対値としての話。相対値としてはやはり高いと言わざるを得ない。規模の大きくないエスコーラとしては簡単に出せる額ではなかった。
そこでソルエスが出した次善の策が、「どうせ送料に莫大な金額が掛かるなら、直接取りに行ってしまおう」という少々乱暴なものだった。
持てる数には限界はあるも、解体し圧縮し工夫すれば結構な量を持って帰れる見込みだった。
基本車移動にすれば重さはさほど問題にはならない。もとより現地では安全面を考え移動は車を中心にする必要がある。
空港等での荷運びも手伝ってもらえる算段はついた。
サンバに携わる者として、本場の空気に触れ、本場のサンビスタとの交流の場をメンバーが得ることは、エスコーラとしても間違いなくプラスになる。
そのレポートなどもコンテンツ化できればエスコーラとしての魅力とブランディングと説得力も増すことだろう。
せっかくブラジルに行くのだからと、事前にガブリエルに相談させてもらって、現地ではリオ参加エスコーラの打楽器隊『バテリア』とダンサーの合同練習である『エンサイオ』や、即興の演奏やダンスを楽しむ『パゴーヂ』のほか、ワークショップやガブリエルのアテンドによる、単なる観光客やツアー客では訪れることのできないブラジルやサンバ文化に深く触れられる場所への案内や人物の紹介なども予定してくれることとなった。