【幕間】 祷 cor primária do céu 3
元々キリスト教の謝肉祭の要素を持った祭りであり、ブラジル人にとってサンバ及びエスコーラと言うものが特別なものでもあるという背景から、サンバパレードには構成や様式にいくつかの決まりがある。
チームを象徴する旗を扱うダンサーや、サンバ発祥の地の民族衣装を踏襲したダンサーの存在など、一般的にイメージされる羽根飾りのダンサーの他にも、いくつかの種類のダンサーがいて、サンバ隊の中で重要な役割を担っている。
サンバはアフリカ大陸から労働力としてブラジルに連れてこられた黒人奴隷が、故郷への想いと日々の生活への不満を歌い踊った音楽が起源とされている。
そこに、支配者階級であった西洋人の宗教ながらその地にも根付いたキリスト教の文化、宗主国の文化も交えながら発展していったジャンルである。
ある国の民族のルーツにも通じ、土着の信仰にも通じ、その国で大事にされている宗教にも通じているサンバは、とにかく楽しむため、もしくは憂さを晴らすために生まれた人間の本能を解放する要素とは別に、厳格な精神性を伴っている側面も持っていた。
サンバに於ける『サンバカーニバル』は、主にサンバにとって大切な精神性を重んじる様式を満たし、護る必要があった。
リオのカーニバルと同様、日本でもサンバのカーニバルがある。
ブラジルのサンバカーニバルを模し、参考にして組み立てられた日本の『浅草サンバカーニバル』も、本場同様コンテスト形式が敷かれ、優勝賞金や下部リーグとの入れ替えが起こる。
毎年『エンヘード』をつくり、『アレゴリア』や『ファンタジア』を作成する。
審査基準や採点基準も同様で、衣装や山車の装飾性、創造性、隊列全体を通した物語性、テーマ曲の歌詞と完成度、打楽器隊のクオリティ、ダンサーの躍動感などパフォーマンスや表現部分だけでも多岐に亘り、加えて本場のサンバ文化を踏襲した様式を満たしているか(必要な役割を持った演者が必要数含まれているか)や、マナー(衣装の装飾が外れて道路に落ちることもNG)などの減点ポイントも加味された採点がなされ、順位が決まっていく。
日本のカーニバルは本場のリオやサンパウロのサンバカーニバルに較べれば規模は小さいが、それでもエスコーラ当たり数百名が参加し、アレゴリアには数百万、ファンタジアにも数万円をかけ、毎年その場に臨んでいる。
とても簡単な言い方をすれば、エスコーラは労力も資力も能力も努力も問われるイベントを、毎年毎年まわしているのだ。