【幕間】 祷 cor primária do céu 2
日本ではサンバを文化的な側面で取り上げられることはあまりないが、リオのカーニバルに関してはニュースでも扱われるため、その知名度が維持できているものと思われる。
裏を返せば、日本国民にとってニュースソースなり難い程度の関心の高さ(低さ)のジャンルでありながら、リオのカーニバルに関してはその限りではないということだ。
とはいえ、リオのカーニバルの内訳を把握している人は、矢張りほとんどいないだろう。
規模がとてつもなく大きいお祭りで、派手なサンバが練り歩く。といった程度ではないだろうか。
カーニバルの名の通り、語源で言えば謝肉祭に通じるお祭りではあるが、リオのカーニバルは複数のサンバチームが覇を競うコンテストの形式をとられている。優勝賞金はなんと約五億円だというのだから、規格外だ。
だからこそ、チーム側、演者側は多大な労力と費用とダンス・演奏・装飾などの技術の粋を結集させ、観客側はその多大なコストに見合う超絶なパフォーマンスに魅了され熱狂するのだ。
参加チームは一部リーグで十二チーム。
いくつかのプロスポーツのように、リーグ制で下位チームは下部落ちという優勝争いとは別の苛烈な争いもあるため、全チーム毎年全力でその場に臨んでいる。
このカーニバルに参加するチームを『エスコーラ』という。
全参加エスコーラは八十にも及び、1チーム当たり一時間程のパレードを実施する。これが四日間続くのだ。
カーニバルに於けるサンバのパレードは、毎年『エンヘード』というテーマを決め、テーマに沿った楽曲、衣装、山車、振付けなどを作成する。
例えば『アレゴリア』と呼ばれる山車だけで見ても数千万円の費用が掛かる。チーム規模の大小はあるが、1チーム当たり数千人が参加する。その参加者の『ファンタジア』と呼ばれる衣装も作成する。物にもよるが十万円弱くらいのものから、百万円近くかかるものまである。それを毎年作り続けている。
人数やお金は規模を計るのにわかりやすい。
その理由は、単純に数字で表され、その値に関する肌感覚は身近でわかりやすいからというのがひとつ。
例えば日本人なら、照度の単位で一ルクスと言われて実際どの程度の明るさなのかをイメージできる人よりも、日本円の単位で一億円でどれだけのことができるのかをイメージできる人の方が多いだろう。
もうひとつは、人数やお金というものは、わかりやすく「力」であるということ。
つまり、単純で純粋な「力」には、良くも悪くも付随するものがまとわりつく。例えば名誉や権力や政治や暴力や。
大きな力が動く分野や業界では、多くの人が人生を捧げてその場に身を置いていることだろう。