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【幕間】 祷 cor primária do céu プロローグ〜1

「ブラジルに行ってたんだって?」


 尋ねたのは上杉要(うえすぎかなめ)さんという先輩。会ったことは無い人だった。


 やはりブラジルにいったという話はキラーコンテンツたり得る。

 せっかく尋ねられたのだ。

 初対面の人たちなら、自己紹介がてら、私を知ってもらう意味でも、この場を和ませる掴みとしてでも、語らせてもらいましょうか。






 私と同じく学園祭の実行委員に所属している同級生の友人川本芙柚佳(かわもとふゆか)に、私に会いたい人が居ると言われたときは、少々の驚きと、それなりの嬉しさが伴っていた。


 それが相談事なのか愛の告白なのかはわからないが、詐欺や勧誘などの悪意さえないのであれば、大抵の場合は好意か、何らかの能力等を認めてもらった証か、いずれにしても良いことのように思えたから。

 仮に悪意があったとしても、それはそれ。見定めて対応すれば良いだけのこと。

 芙柚佳によると、私に会いたいと言っているのは新入生の女性のようだ。その子の先輩が私に繋がる人脈を当たり、その会談は成ることとなった。その子の先輩の名は上杉要(うえすぎかなめ)さん。一年上とのことなので、私にとっても先輩にあたる。上杉さんと芙柚佳も紹介窓口として同席してくれることになった。

 後輩は色部誉(いろべほまれ)というらしい。心当たりはない。具体的な内容も不明。新たな出会いには楽しみしかない。



 指定されたお店に行くと、既に三人はテーブルに着いていた。



 店員に待ち合わせであることを告げていると、奥から芙柚佳の声がした。

 店員越しに奥へと目をやると、芙柚佳が手を振っている。



 芙柚佳と向かい合って座っている二人には、やはり見覚えはない。

 黒髪の女性はひらひらと手を振っている。遠目での感覚でしかないが、余裕がありそうな人だ。こちらが先輩だろうか。



「あの席です」待ち合わせ相手を見つけたことを伝えると、案内不要の意図を捉えてくれた店員は、笑顔で黙礼をすると仕事に戻っていった。



 私は足取りも軽く、三人のいる席へと向かった。







~~スルドの声 外伝~~ 原色の空



 サンバ。


 認知度だけで言えば抜群だろう。

 しかし、意外と詳細については知られていない。

 認知度の高さと詳細が知られていないことや誤解されていることなどのギャップの大きさは同等の知名度を誇る言葉の中ではトップクラスではないだろうか。


 上半身を揺する動き。

 マラカス。

 ホイッスル。

 露出好き。


 挙げればキリがないが、他ジャンルとの混同、間違いではないが若干ズレているもの、大いなる誤解、知られていないこと。そんな要素がいくらでも出てくる。それをして、「ほぼ正しくは認知されていないジャンル」と、サンバの打楽器である大太鼓の「スルド」奏者の姫田祷(ひめたいのり)は常々考えていた。そして、この分野をもっと広めたい、もっと正しく伝えたいとも。




 そんなサンバであるが、リオのカーニバルが有名なお陰で、本場がブラジルであるということは、サンバの詳細情報の中に於いて、広く、そして詳しくはないが比較的正しい内容で知られている情報のうちのひとつだろう。



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