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暗くて重い事実があるとするなら、安易には語れはしないだろう。
だから、続く言葉を発する要さんの表情が。発せられた声が。
暗いものだったり抑えたものだったりしなかったことが。なんなら少々クールな要さんにしては、少し弾んでいるように思えたことが、私を安心させた。
一瞬の間で、ありとあらゆることを想定した私の妄想力を、心配性にもほどがあると自ら笑い飛ばすことができた。
「話聞いてたらさ、姫田さんってすごいよ」
安心した私の心に、要さんの割と軽やかな語り口が溶け込むように入ってくる。
悪い結末に構えなくて良さそうな流れに、私の内側は心底安心しきっているようだ。
ただ、深く話を聴いてみると、一瞬の間によぎった暗い予測たちは、一部当たらずとも遠からずな部分もあったみたい。
姫田祷さん。
要さんが話を聴いたという姫田さんの友人も、都心の女子大生のような華やいだ雰囲気の方だったらしいが、その友人をして、「華がある」と評価される姫田さんは、画面越しに見た印象の通り、実生活でも花も実もある大学生生活を送っていた。
イベントの実行委員のほか、起業系のインカレに所属し精力的に活動したり、仲間と作ったアプリを企業に売却したり。
昨今学生起業家なんかも増えてきているから、この手の活動をしている学生はそれなりに居るのだろうが、全体からすればまだまだ限られた層と言えるだろう。
姫田さんはサンバに出会い、スルドを始めたあとも、学業、友人関係、学内外の活動など、これまでと遜色なく全うしながらも、サンバに関しても十全に機能し、充分に楽しんで臨んでいた。
サンバをこれまでの活動のひとつだった動画配信と組み合わせ、動画配信で収入を得るなど、複数の取り組みをひとつの取り組みに圧縮して、複数分の効果を果たすと言った、効率化も図っていたようだが、サンバの活動に於いてチームの拡大やサンバ文化の発信、振興などにも食指を延ばし始めた姫田さん。
すべてを楽しんで取り組んでいた彼女は、積み重なる疲労も忘れて邁進していた。貧血で倒れたこともあったようだ。
その後、体調を崩してしまったらしい彼女。なんでも入院することになったのだとか。
センシティブな情報だし、そもそも詳細までは知らなかったのかもしれないが、症状や病名などの具体的な部分は語られず、要さんもそこは本質ではないため追及はしなかった。幸いにして重い病ではなかったようで、すぐに退院となったらしい。予後も良好だ。
私の暗い予測で当たったとするのはこの部分だけ。
更新が滞った理由の一つが、この入院をきっかけとしたものだった。
理由のひとつとしたのは、その後しばらく更新されていない理由と、今会えない理由は、別のものがあったから。