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銀座の接客

 規模の大きい繁盛店はやっぱり違う。


 開店早々に大勢のお客様がいらっしゃった。

 それを手際よく捌くボーイさんたち。

 ひとりひとりのスキルが高いというよりも、仕組化がうまく為されていて、ボーイさん同士、ボーイさんとキャストの連携がしっかりと機能しているというイメージを持った。


 連携といっても経験に依存するような部分は少なく、仕組みを理解しその通りに実行すれば私でも滞ることなく機能できた。

 ひとりひとりのスキルに依存しないと評価しておきながら逆説的ではあるが、仕組みに沿って動くことで、結果として受付業務、アテンド業務に最適化されたスキルが自ずと身に付く体制になっていると思った。



 会員制ゆえにほぼ常連のお客様で占められている客層は、気持ち余裕のありそうなひとたちが多く、一流であり、粋に遊んでいるという自負を持っている方が多いように見えた。


 そういう格、あるいはそういう意識を持ったお客様と、如才無く渡り合っているキャストたち。

 きっと私が見逃しているような動きや言動のひとつひとつも、目的と意図に沿っているのだろう。働きながら、そのすべてを見聞きできるわけではないが、少しでも身につけて帰ろう。雰囲気だけでも、身に浴びて帰ろう。



 唯華ママの今日の思惑。

 道に迷っている時、要さんとの通話の中で問われた際に答えた回答には入れていなかったが、時給だけでなく、歩合でしっかりと稼げるように、直接的な接客スキルを身に付けさせたいという意図、というよりも親心のような想いが感じられた。

 以前しょーちゃんが私には高級店に来られるようなお客様と相性が良いのではないかといってくれた。そういう意味でも、『Three ducks』ではあまり体験できないプラクティスの場を用意してくれたのかもしれないと思った。




「誉ちゃん、あの団体さんとこ、私と一緒に入ろう!」



 渚ママにそう声を掛けられた。

 なぜか渚ママはいたずらっぽっく笑っている。その辺も唯華ママにちょっと似ている。やっぱり流派なのかな。


 基本無いと言われていたが、渚ママは唯華ママの思惑を組んでくれたのか、単純に人手が足らないのか、都心の高級店で一流とされているお客様の接客をする貴重な機会を得られることになった。



 渚ママは唯華ママよりも先輩であるし、店舗オーナー同士ではあるも店舗の格式としては渚ママのお店の方が高い。

 そういった背景からも、唯華ママよりは厳格なイメージを持っていたが、たった数時間一緒に居ただけだけどどうやらかなり軽いというか、調子が良いというか、茶目っ気のある性格であることがわかってきた。

 渚ママが同席されるなら、その場は明るいものになることだろう。



 渚ママに、妹分のお店の子、要は姪っ子みたいなものとして紹介された私は、指名のキャストが戻るまでの時間を、楽しんでいただけるようがんばった。つもりだったが成果はどうだっただろう。

 渚ママが私をいじってくれて、その場ではみんなの姪っ子みたいな感じでかわいがっていただいた。盛り上がってもいたと思う。

 でもそれは、渚ママの手管に依るものだ。私ひとりではそううまくはいかなかっただろう。

 熟練者の業に舌を巻きながらも、自身の立ち位置やキャラクター性、見せ方なんかのヒントが得られる機会になった。


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