訪れない始まりの予感
大学生活も、始まって仕舞えば思っていたほどには劇的でもなく、刺激的でもなかった。
実家からは電車で二時間程度。通えなくは無いがこれを機にとはじめた一人暮らし。
ドラマやマンガなどでよく描かれる新入生のサークル勧誘。
ストーリーのはじまりになりやすい導入部分も、私にとっては着火剤にはならなかった。
(何かを求めるなら、サークルくらいは入ったほうが良いのかもしれないなぁ)
とは言え、いまいちピンと来るものがない。
未経験で今から本気のスポーツ系のサークルに入ってもついていけないだろう。初心者歓迎と言われても、ずっと基礎練だけでは辛いし、お情けで試合に出してもらえたとしても心の底から喜べるだろうか。本気で好きで取り組み続けたのなら或いはと思うが、そもそもそれほど好きな競技があるなら、すでに入っている。
文化系のサークルは、最低限興味を持っていることは必須じゃないだろうか。取り組んでみて興味を持つこともあるとは思うが、それが何かわからないうちに、なんの指標もないまま選ぶのはギャンブルでしかない。入会し、合わなければ退会し別のサークルに入る? 合うサークルが見つかるまで、見つからなければ就活が始まるまでそれを繰り返す?
それもまた選択肢なのかもしれないが、効率が良いとは思えない。それに、試しに入って辞めることになるサークルのメンバーにも迷惑をかけるような気がした。
飲みサーやイベサーなんてのはもっと性に合わない。
友だちづくりを目的とする行為を否定する気はないし、私だって友だちが増えるのは良いことだと思っている。
でも、私が目的としたい「なにかに取り組む」行為とは異なっている。
今は、取り組むべき「なにか」を見つけたいのだ。
(ブラジル文化研究みたいな活動内容のサークルがあれば良いのだけど)
大学によっては、そのような標題のサークル内の活動の一環で、サンバに取り組んでいるところがあった。
中にはエスコーラとして、サンバカーニバルに出場しているところもある。
「エスコーラ」とは簡単に言えばサンバチームのことで、チームの中でも特に様式を満たしている団体のことを指す。
サンバの楽しみ方は多様で、そのうちのひとつに「サンバカーニバル」がある。
カーニバルの名をそのまま捉えると、参加型のお祭りといった意味合いになるが、サンバの世界で「サンバカーニバル」と言えば、様式や構成に厳格な決まりがあり、複数の参加チームが審査項目に沿ったパフォーマンスを披露して順位を競うコンテスト形式の催しのことを指す。
サンバカーニバルに於ける様式を満たしているチームが、エスコーラを名乗れるのだ。