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それとも意地?

 奨学金制度で問題視されていることは、思い込みなども含めた制度への理解の不足と、人生設計に於ける収支計画の甘さも要素になっていると思う。制度側の説明不足、分かり難さも問題だし、受ける側の理解力や認識の正確さも大切だ。

 与えてもらって当たり前。条件については検討をせず、認識もせず、後から「知らなかった」「聞いてない」「思ったのと違う」と言っても、誰かがどうにかしてくれるわけじゃない。

 説明する側に明らかな違反や瑕疵が無ければ、結局そのリスクは取り返しがつかないまま、本人が背負って生きていくことになるのだ。


 では、正しく理解したうえで、私はどうするのがモアベターだろう。


 今足らない額を奨学金で補う。

 補った分を社会人になってから二十年に亘り返していく。

 ストレートに行ければ四年間。足らない分だけを借りたとして、その額を二十年にわけて返していく。

 活動時間内に学業とバイトを組み込むという建付けではなく、仕事を生活の大部分に充てられる社会人の収入は、時間が限られている学生よりも多くなると思って良いだろう。基本的には少しずつでも給料は上がっていくことも加味すれば、今得た借金が無利子であるなら、将来少しずつ返すことはさほど難しくないことのように思えた。なら、有利子ならどうか。できなくはないが、少し厳しいだろうか。でも裏を返せば多少無理すればどうにかなるとも言える。

 但しこれは、人生が比較的スムーズに進んだ場合だ。

 社会問題となっているのはやはり有利子のケースが多い。一方で無利子の対象者でも数パーセントは返済困難に陥っているようだ。

 仕組みの問題なのか、個人の問題なのか、見極めが難しい。

 どちらにしても、支払いが滞ってしまう理由は収入が思うように得られなくなってしまったケースだろう。

 それでも取り立ては止まないし、遅延した際のペナルティの重さが問題の深刻さに拍車をかけている。

 収入の問題なら、個人の問題だ。

 では、その個人の問題が私に起こらないかと言えば、そんな保証はない。


 良さそうな職場を選んだのにふたを開けてみればブラック企業だったなんてことは有り得る。

 有名企業や上場企業だったとしても可能性をゼロにはできない。

 退職理由の大半を占める「人間関係」に関してはギャンブルみたいなものだ。就職先は調べられるし選ぶこともできるけど、配属先のメンバーや上司は選べない。怪我や病気で働けなくなることだって可能性としてはある。



 リスクを殊更取りざたして検討すると、有利子の奨学金を借りるのは怖いと思ってしまう。



「誉の親の年収ってわかる?」



 奨学金制度に詳しい要さんによると、実態としては有利子の二種を借りている学生が殆どだ。成績の他、親の年収にも基準があり、無利子の貸し付けを受けられる層は限られている。


 親の年収はあまりわからないが、低くはない気がしていた。勤め先名と職種、職位は把握している。



「有名企業じゃん。ネットに年齢と職種の年収目安載ってるよ。……うわ、やっぱり高いね。これだと一種厳しいかも」



 となると、有利子という条件で、返済計画を組めるかどうかが検討材料となる。



「親の収入のせいで借りられないなら、やっぱり親に頼るってのがあるべき姿なんじゃないかな?」



 要さんが諭すように言った。


 国費を使う前に、まずは家族単位で何とかしろというのがこの国の考え方の基礎にある。生活保護なんかもそうだと聞く。


 個々に事情があるし家族とは言え他人だ。

 家族という理由だけで他人の負債を押し付けられる人もいるだろう。已むに已まれぬ事情があって家族から離れた人、家族に頼れない人もいるだろう。家族が味方とも限らない。敵対し合い、憎しみ合っている家族もいるかもしれない。

 そんな諸々の事情も考慮せず、一緒くたに「家族だから」まずはそこで助け合えといわれても、漏れる人掬えない人零れる人は現れる。

 一方で、税金を払っている側からすれば、身内がいるのにまず国費を使うのはどうなんだと批判に思う気持ちもわかる。



 私の場合は大げさな理由があるわけではないのだ。税金を使うなら、まず自助努力で何とかすべきと言われる側の人間だろう。



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