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【尚登り続ける者として。別の山へと挑む登攀者へ】

 わたしができることは、バレエを頑張ることだけ。

 そこで何かを成し遂げれば、きっとほまれちゃんは喜んでくれるだろう。

 配信をほまれちゃんと一緒にという計画も、楽しんでくれると思う。


 でも、わたしが、ほまれちゃんのためにできることをと考えたとき、あまりに何もないことに気付いた。


 気付けたことが、この帰国を経てのわたしの成長だったならば。

 ここから先は、大丈夫だ。

 そう、ここから、始まるんだ。


 もらってばかりだったわたしが、ほまれちゃんに、のぞみやおばあちゃん、おじいちゃん、お父さんとお母さんにも、与えていけるわたしになるための、一歩が。



 たしかにほまれちゃんは、あの時バレエを辞めてしまったのかもしれない。

 それは、バレエしか知らないわたしからしたら、世界がなくなるほどの一大事だ。

 でもほまれちゃんは、その狭い世界から出ただけなのかもしれない。

 広い世界で、ほまれちゃんは「サンバ」という、新しい人生の取り組みに出会えていた。


 それはやり直しなんかではない。

 ひとつ目の挑戦が無駄になったわけでも、無意味だったわけでもない。


 バレエを経験し、身につけてきたもの。

 それは音感だったりリズム感だったり。

 努力する習慣だったり本番に臨む前のコンセントレーションの高め方だったり。


 そういったものを習得したほまれちゃんが、サンバの世界で活躍するんだ。



 バレエの世界で挑戦し続けるわたしを、きっとほまれちゃんはこれからも助けてくれる。


 それならば。


 わたしはサンバの世界で活躍するほまれちゃんを助けたい。



 そのためにも。

 ほまれちゃんと、たくさん交換をしよう。言葉を、考えを、想いを。

 一方通行じゃない。わたしのことを聴いてもらうだけじゃない。ほまれちゃんのことを、たくさん聴かせてもらおう。


 今はまだわからない。わたしがほまれちゃんのためにできることも、ほまれちゃんが何を求めているのかも。

 でも、交流のその先に、合致するものがきっとあるはずだ。




 踏破すべき頂はまだまだ霞の先だけれど。

 見えない先の情景は、今はいったん置いておいて。


 今、目の前にある景色を。充分楽しみながら、情報を得ていけば良いのだ。


 幸いツールはいくらでもあった。

 距離を越えてタイムリーにやり取りができる。

 恵まれた環境は存分に活用させてもらいながら、ちょっと改まったことは古いツールを活用するのも悪くないと思う。






 慣れない手紙を書き終えたわたしは、忘れないよう明日の荷物にしまい込んだ。






 伸びをして身体をほぐし、ベッドに乗って腰高窓を開けてみる。

 風が気持ち良い。



 この空気も、届けられたら良いのにな。



 わたしの想いを込めるだけ込めた手紙。

 リアルタイムでやり取りできるツールが増えたからこそ、手紙は未来と繋がるツールのように思えた。



 まだ出してすらいないのに、その手紙が繋いでくれる未来が、今から楽しみで仕方がなかった。

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