バイト探し
探してみると、大体時給千円前後の仕事が多かった。
千二百円や千三百円と言うものもそれなりにあり、千五百円もらえるものも珍しくはない。
しかし、それを超える額となると急に見かけなくなる。
やはり二千円と言うのは簡単な額ではない。
「ちなみにやりたい仕事とかはあるの?」
検索しながら要さんが尋ねた。
特にこれってのはないけど......。
「カフェ、とか?」
「雰囲気とかイメージで言ってるよね。まあこだわりがあるよりは探しやすいか」
「カフェ、意外と高いとこあるね。千五百円とか。カフェバーみたいなとこも入れれば結構選択肢ある」
しょーちゃんが言うと、要さんがしょーちゃんのスマホを覗き込む。私も見せてもらった。
「同じ会社が同時に同じ時給で派遣社員も募集してるねぇ。まあその時給だと、派遣社員の時給になってくるよね」
「バイトと派遣、同時に集まったら派遣の方が有利なのかな?」
「どうだろう。派遣だと派遣会社がマージン取るから少し高いのかな? でも責任とか派遣会社がとってくれるし、派遣社員の教育や管理もしてるから使う側としては安心感あるかも」
ライバルは強力かもしれないけど、魅力的ではあった。応募するだけしても良いが......。
「でも、さすがに二千円はないね」
そう、額が届かないと破綻してしまうのだ。
「ねぇ、誉。仕送りもらってないんだよね? そこはどうにもならない?」
親からは学費は出してもらっている。
それ以外は自力で頑張るつもりだった。
親とは喧嘩をしているわけではないけれど、中学を卒業する頃から今に至るまで、私と両親の間に流れている空気は、乾いてはいないがひんやりとしている。
期待に応えられなかった私がいけないなら私が原因となるが、私の人生に勝手な期待を乗せられても困る。でも、それまで応援と支援を受けたことには感謝はあるし、それを無駄にしてしまったことに申し訳ないと言う思いもある。
親には口を出されたくないからお金も出させないようにした。
親にこれ以上負担をかけたくないからお金を出させないようにした。
両方の気持ちが、私にその決断をさせた。
家を出る時、親は無理だとは言ったが反対はされなかった。私は言うことも聞かず家を出た。
以来、たまに母から様子を尋ねる連絡は来るが、こちらからは連絡していない。
父はきっと、私がすぐに根を上げると思っている。
それを待たれているようで、私はより一層頑なになってしまう。
お互い意地を張っているだけ。
それはわかるのだけど、ここを譲ってしまっては、私は私というものになんの自信も持てなくなってしまう。貫くべきものも持たない空っぽのようなものになってしまう。
持っていても仕方のない無意味なプライドなんて捨てた方が良いというのもわかる。
だけど、私は。
勝てないのなら。何にも勝てないなら。
せめてもう、負けたくは、なかった。