カーニバル
テレビ画面では、個性的なビジュアルとトークスキルで人気のタレントと、日本のサンバ業界では著名な、本場リオのカーニバルにも出場経験を持つ男性ダンサーがトークショーを繰り広げていた。
「へぇー、意外と奥深いねぇ」
番組では、サンバの中でも特にサンバカーニバルの文化について、細かく触れていた。
世界最大規模のお祭りで、地上最大のショーとも言われる「リオのカーニバル」。
一週間ぶっ通しで開催されるこのお祭りは、日本で報道されることもある。名前くらいは知っているという人は多いはずだ。
イメージとしては、半裸の男女が踊り狂う陽気なお祭りといったものだろう。
しかし実際はシビアなコンテストで、人生を賭して挑んでいるサンビスタも珍しくは無い。規模についても、人数や金額など、あらゆる要素をそれぞれを数字で表せば、ほぼすべてに於いてその値は桁が違う。
ひとチームあたり数千という規模の桁違いの参加人数ながら、それでも厳選された者のみが出場できるというのだから、裾野の広さは果てしない。
日本のサンビスタがリオのカーニバルに出場すれば、その経歴は一種のライセンスのように輝く栄誉となっている。
番組では、男性サンビスタによりもたらされる知られざる情報に、コメンテーターの個性的なタレントは大げさなリアクションとセンスある返し、独自の切り口によるコメントなどで進行していて、サンバを知らない人にもその世界の特異性や凄さなどが良く理解ができ、より興味を持たれる内容となっていた。
サンバがメディアで取り上げられるとき、「奇異なもの」、「単なる陽気さやお祭り騒ぎ」、「セクシーさ」、「盛り上げ役」といったイメージで用いられることが多い。
多分な誤解を含んでいることもあれば、製作者側の恣意的な意図が見え隠れしていることもある。テレビ番組の出演依頼を受け、当然事前に打ち合わせをし、その内容ならばと受けてみたところ、話と全然違うイメージで映像化されたなんてことも起こっていると聞いている。
サンバにまじめに取り組んでいるサンビスタほど、そのような目に遭いテレビ出演を敬遠するようになるなんて話は、以前所属していたエスコーラでも、『ソルエス』の先輩からも、何度となく聞かされている。
そんな背景を考えれば、この番組は真摯と言えた。
「誉全然こういうの教えてくれないじゃん」
なんて、感心している要さんの横で、私も(こんなスタンスで取り上げてくれる番組もあるんだなぁ)と感心しながら、要さんの前に置いてあった裂けるチーズをつまみつつ、画面を視ていた。