表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
186/196

後日のひととき

「誉ぇ。これ、サンバのことじゃない?」


 ソファにややだらしなく背を預け、コンビニで買ってきたきゅうり一本漬けをパッケージの袋から直接かじりながら、レモンサワーを飲んでいた要さんがテレビ画面を指した。

 キッチンで洗い物をしていた私は、濡れた手を拭いてリビングに向かう。

 洗い物と言っても、料理をしたり食事をしたりしたわけではなく、先ほど食べたハーゲンダッツのカップを水洗いしただけ。



 イベントが終わっても、すぐに中間テストに向けての勉強が始まり、私も要さんも家事をする気力などとっくに失せている。

 食事は外食か昼食。バイトがあるときはバイト先の賄で済ます。可能な時は賄をお弁当にしてもらう。

 お風呂はシャワーで済ませつつ、湯船の掃除とトイレの掃除は二日に一度まとめてにし、それを交互に行うことで、一人あたりは四日に一度の作業で済む方式を採用。

 部屋はなるべく散らからないようにし、『Three ducks』のお客様がプレゼントしてくれたお掃除ロボットで部屋は綺麗な状態をキープする。

これが、今の私たちにできる精いっぱいだ。



「あ、そうですよ。この人有名なサンビスタです。日本人離れした雰囲気ですけど日本人なんですよー」


 なのにふたりして嗜好品を貪り、観るともなくテレビを観ているのだから、矛盾している。

 それはわかっているのだが、言い訳をさせて欲しい。


 イベントが終わって。ほっとして。

 どっと押し寄せてきたのが、これは心労? の前借分? とでも言おうか。

 もう終わっているのだから、心労など掛かりようがないはずである。であるのにこの疲れ、というかやる気の出なさ。走っていた時には気付かなかった、後になって気付く当時の気疲れがもたらす倦怠感を、私はあるがまま受け容れていた。



 確かに私は企画の発起人ではあったのかもしれない。


 そんな私の企画は、多くの人に助けられた。結果、成功を収めたと言って良い。

 そう、始まってしまえば多くの人の助けを受けられた私は、当日なんてほぼ演者としての動きしかしていない。


 仕切ってくれたランドさん、会社ぐるみで手伝ってくれたしょーちゃんたち、後援の立場をとっていた『ソルエス』として、ソルエスの代表であるハルがそのまま責任者となってくれ、関係者たちとの連携も図ってくれた。他の『ソルエス』メンバーたちもありとあらゆるポイントで、労力を担ってくれた。それぞれ演者としても参加するにもかかわらず。

 人をたくさん呼んでくれた『Three ducks』のお客様や要さん。

 演者となるメンバーたちも集客面でも友人知人家族に声をかけ、箱のキャパを超えるほどの来場者に恵まれた。

 もちろん、広報やSNSでの発信も公式個人それぞれが積極的に動いてくれたので、一般の方の来場も想像を大きく超えるものとなった。


 他にもきっと、私が認識していないところでも、たくさんの人たちの手助けがあった。



 私の苦労など、ほんのひと欠片のはずだ。



 それでも、やっぱり、疲れたものは疲れたのだから、それは仕方ない。

 息つく暇もなくテスト勉強に入ったものの、一旦体制を整える必要はあると思う。

 だから、ほんのひととき、だらっと過ごす時間はあっても良いのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ