動き出す街
ふたりで笑い合った。笑いから立ち直った要さんがひといきついていう。
「まあ、そんな一次会だったけど、全体としては結果楽しかったよね。あ、今度女子だけで遊ぼーって来てる。別の子からはリベンジで別の男子紹介してくれるって。今度は社会人だって。大手総合商社の人たちらしい。優秀な人たちなのかもしれないけど、だから良い人かって、また別の話だよねぇ。別に良いんだけど、正直女子だけの集まりの方が楽しそうだなー」
その感覚には私も同意だが、それは一般的なのだろうか?
「上杉先輩は彼氏つくらないんですかぁ?」
要さんには高校時代彼氏がいたはずだ。あまり一緒にいるところは見かけなかったし、受験が本格化する頃には外で会うことはほとんどなくなっていて、大学に入り郊外でひとり暮らしを始めるにあたっては、ほぼ自然消滅したというようなことは聞いていた。
「欲しくないわけじゃないよ。良い人いたら全然付き合いたいんだけど、今日の感じ見ててもさぁ、そういう場で良い人ってなかなかいない気がするー。色部は?」
私は私で、少々情けないが浮いた話はほとんどない。
バレエ漬けだった中学の頃の方がまだ彩りがあった。ありがちだが、同じ教室に通う子とパドドゥの練習をする中で少しだけ良い雰囲気になったことがあった。これもありがちだが、ダンスのパートナーとは練習する中でギクシャクしたりもするのだが。
「んー、私もおんなじです。欲しいけど、無理に作らなくても、とは思いますねー」
「ね、女子だけで全然楽しかったしね。カラオケも。ふたりだけになっちゃったけど、その分がっつり歌えたね」
「上杉先輩うた上手でしたぁ! 高校の時も何回かカラオケ行きましたよね。その時も上手でしたけど、なんか声に伸びが出てません?」
「そぉ? バイト先でたまに歌ってるからかなぁ? ねー、もう二人とも大学生だし、呼び方変えない?」
「え? 同じ学校だから、変わらず先輩じゃないですか」
「そーなんだけど、年取ればとるほど二歳くらいの年齢差なんてあってないようなものになるんだし、名前で呼び合おうよ」要さんは、お互い大学卒業しても、遊んでくれるでしょ? と、上目遣いで聴いてきた。
ええ、なにそのかわいいやつ。高校の時にはそんな姿見たことが無い。大学に入って……いや、バイト先で身に付けた技術?
「も、もちろんですともっ。ええと、じゃあ、要、さん?」
「なーに? 誉? ……あはははは! なんか距離詰まった気―するねー! 誉ぇ」
「ちょっと、要、さんっ……アルコール抜けてないんですかっ」
「やー、これは夜更かしハイでしょー」
「わかってるなら自制を……!」空はいつの間にかかなり明るくなっていた。
明るさに比例し、駅へと向かう人もちらほらと。人によっては公園を突っ切るルートを取っている。明らかにオールしたであろう学生っぽいふたりが、人目もはばからず馬鹿笑いしている姿はちょっと目立ってしまう。
ん? 駅に向かう人、ということは。