大学生になってからの要さんとの思い出
早暁の街は、ゆっくりと鼓動を始めていた。
街が本格的に動き出すには、今しばらくの時間が必要と思われたが、遠くに聞こえる電車の音や、灯ったままの街灯が白んでいく空と同化し始めていて意味を失いつつある様子は、既に今日が始まっていることを示していた。
昨晩(と言っても日付はとうに変わっていたが)深酒をした要さんはまだ深い眠りの中だろう。
私も要さんも今日は大学へは行かない。
私もお酒こそ飲んではなくとも寝入ったのは遅い時間だったからもう少し寝ていたかったが、一度起きてしまったら、妙に目がさえて眠れなくなってしまった。酒の勢いでもあったのか、要さんが妙に褒めてくれるから内心興奮しているのかもしれない。
寝ることをあきらめた私は、部屋に居てもリビングに居ても物音で要さんを起こしてしまうかもしれないと思い、明け方の街を散歩することにしたのだった。
東の方から空の色が反転していくに従い、世界が色づいてゆく。
同じような光景を少し前にも見ていた。その時は隣に要さんが居た。
大学に進学し、ひとり暮らしを始めたあの頃。
実家を出るに至った背景には楽観的になり切れない部分はあるも、そういう部分を断ち切ったというところも含め、これから始まる新生活に向け、率直に心は浮き立っていた。当たり前だが、当時は比較的すぐに引越しすることになるなんて思ってもいなかったし。
大学に入ってまた要さんの後輩になれた。
要さんの高校卒業後は、たまに連絡を取り合うことはあったし、同じ大学を受験するにあたって相談に乗ってもらったこともあったが、一緒に遊ぶようなことはほとんどなくなっていた。
また高校時代のあの頃のように要さんと遊べる。その期待に心は弾んでいた。
要さんから早速お誘いがあった。
飲み会とのことだったが、男女の人数を揃え、男性グループと女性グループはそれぞれを取りまとめる感じ以外は初対面。
これは、むかし大学生が良くやると言われているコンパなのでは? そして、この形式は合コンというやつだ!
最近は合コンというものはあまりやらなくなったと聞いていたが、飲み会や食事会と名を変えているだけで、実質合コンと変わらないような会自体は全くなくなったわけでもないらしい。
高校時代も女子の団体と別の学校の男子の同じくらいの規模の団体でカラオケや食事会をしたことはあったが、言っちゃえば所詮ままごと。
今回のこれは大学生による本格的なやつだ!
大学生になると早速そういうのに呼ばれるんだ! と、よくわからない感動を覚えたものだった。