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会計委員の日々

 要さんの四次元バッグに満たしてもらったこともある。


「色部、細かい誤字多い……!」


「すみません、なんか全然集中できない……」


「糖分足りてないんじゃない? これ食べときな」



 要さんはいつだってキットカットやポッキーを持っていた。




「あれ? 会議の事前資料ない……印刷したはずなのに」


「まあそういうことあるよねー。機密情報じゃないからどこかで無くしたとしても大丈夫だよ。まだ全然時間あるし、もう一回出力したら?」


「や、今回の会議新しいタブレット導入の告知みたいなのがあって、今その説明資料大量に印刷中だよ。多分会議開始ギリギリまで印刷機使えないと思う。ちょっと待ってて、私余分に刷ってたはず……」


「上杉せんぱぁいっ……!」流石要さん。準備に抜かりが無いのは当たり前。万が一への備えも万全だ。


「……ええと……あれ、なんだこれ?」


「わ、でっかいメンチカツのパン!」


「上杉せんぱい……?」要さんが、でかいメンチカツが入ったでかいパンをほおばる姿はあまり想像できなかった。


「ふたつあった。本庄、色部、たべる?」


「色部ちゃん……? おかずパンはあまり日持ちしないから。ね?」


「え、本庄先輩なんでこっち見てるんですか⁉︎ ね? ってなんですか⁉︎」


「……いらない?」高校時代も今と同様、あまり感情を顕さないクールな要さんが、どことなく寂しそうだった。


「い、いります! いただきます! おなか空いてたのでちょうど良いです! ふたつとも、ですよね? わぁい! 夜ごはん何も食べれなくなりそうだけどうれしー!」まあ、パンは好きだし、おなか空いていたのは間違いないし、ありがたくいただくことにした。


 けど、その場でふたつ食べるつもりではなかった。のに……!


「ほら、急いで! もうすぐ会議始まっちゃうよ」


「ひゃい」口の中はパンとメンチカツでいっぱいだ。


「あは。色部は食いしん坊だなぁ」ちょっと! 本庄先輩の分も私が食べてるんだから……!

 内心思いながらも、私はとにかく急がないとという意識で大きいパンを一生懸命咀嚼していた。


 いや、そもそも要さんの分なのだが。


 口の中のパンを飲み込み、「それで、資料ありそうですか……?」要さんへ問う。


「……私のを見せてあげるよ」




 思い出そうと思えば、要さんとの思い出はいくらでも出てくる。




 執務室の鍵を無くしたときも、要さんは一緒に探してくれた。

 鍵は私のデスクの上の書類と書類の間にあった。




 本庄先輩が子ネコを拾ってきたときも、私は執務室の一角にこっそりネコを飼えるスペースを設けることしか思いつかなかったが、要さんは人脈と発信力を総動員して迅速に飼い主の成り手を探してくれた。



 懐かしく、輝かしい、日々。



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