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音楽

 私が音楽イベントをやることを伝えられたキノさんの様子は、少なくとも全くの無関心ではなさそうと思えた。


 音楽に興味があるのならーー。



「キノさんはどんな音楽が好きですか?」


 んー、と少し考えてから、キノさんはゆっくり口を開いた。



「ブランキージェットシティーってわかるかな?」



 日本のロックバンドだよね? バンド名は聞いたことある気がする。とんがった感じのバンドって印象。正直意外だった。

 ジャズでもフォークでもクラシックでもなるほどって感じだし、平井堅やミスチル、コブクロ、スピッツ、ユーミンやサザンや井上陽水あたりでもあーありそうって思えたし、洋楽ロックやメタルでもそれはそれでなるほどなって思えたけど、このチョイスは意外だった。



「歌詞がね、とにかくダサくて……ふふ、例えばこれとか」



 スマホで歌詞を検索して見せてくれた。

 歌詞だけ見てもよくわからないというのが感想だが、シックスティーズのアメリカ憧れの強い昭和後期の不良少年が格好つけている感じ? それをダサいと思って敢えてやるのではなく、純度百パーセントでやっている感じ?

 歌詞を文字だけで見て、特にダサいとは思わなかったが、格好良いいかと言われるとそれもよくわからない。

 文学的な気もするし、古くておしゃれなアメリカ映画に出てきそうな言い回しみたいな気もするし、詩的な気もするが、評価しろと言われたら難しい。

 まあこの場合、論点はキノさんの評価への同意が不同意ではない。そもそも自らが好むものへのネガティブなワードを、嬉しそうに語っているのだ。埼玉県民が自県を自虐的に評しながらも誇らしく思っているのに似ている。

 であればその内訳への私の感想はあまり意味はない。

 キノさんが自分の趣味嗜好を開示してくれたことが重要なのだ。そして、これまであまりなかったその状況を、私は嬉しく思った。



「ユニコーンみたいに、敢えて格好つけないとか、抜いてるとかそういうのの逆で、格好つけてるのにダサくてさ……なのに、彼らがそれを唄うとむちゃくちゃ格好良いんだ」



 ほかの、誰がやってもダサくなってしまうようなことをやって、格好良い。そうだとするなら、確かにそのプレイヤーは格好良いのだと思う。

 そう言うものに、キノさんも憧れた頃があったのだろうか。文学的とも思える歌詞も、そういう意識で捉えればキノさんに合っている気もする。



 普段のキノさんなら、まず相手に気を配る。相手がわからない話題は避ける。



 でも今、語っているキノさんは、私がそのバンドのイメージがまったくついていなくても、関係なく楽しそうに話していた。例として出された同じ時代に活躍していた他のバンドのことだって、私が理解しているかなど関係なく名前を出している。

 そのこと自体、キノさんとの会話では珍しい。

 ある意味キノさんがノっている。自分の好きな話をしている。そう思えた。

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