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どんな先生?

 キノさんが穏やかに語ったその話は一般論の一部であり、キノさんの思う世の中の話で、まだキノさん自身の話にはなっていない。


「生徒たちとは仲良いの?」


 踏み込みすぎかもしれないが、会話の流れだ。忌諱の雰囲気を感じるまではいってみよう。


「そうだね。意外と良いんだよ。生徒と共通の話題で盛り上がったり球技大会で活躍できる若い先生とか、話の面白い先生とか、そういう部分の何ひとつない面白味の無い先生だけど、まったく圧を感じさせないのが好ましいのか、必要に迫られていない場面であっても頻繁に声を掛けてくれる生徒が何人か居るね」


 なんとなく納得できる話だった。

 若くて見た目が良い先生は生徒人気が高いことがあるが、なんというかちょっと生々しい。

 そして、その手の要素で高い人気を得ていると、ちょっとしたことで評価が暴落したりする。

 生徒におもねっているように見えてしまうと途端に嫌われることもある。調子に乗っていると見られても同様だ。

 やっていることは同じなのに、同じ評価者が前の日は肯定的だったものが次の日は否定的なんてこともある。

 生徒は移ろいやすく、集団という実態を持たない個人個人とは別の生き物が、個人個人の好き嫌いを左右することもあることを考えると、やっぱり教職というのは大変だと思う。


 キノさんは、飾らずあるがままで。

 好かれようとは思ってなく、通したいほどの我も無いのでぶつかりにくく、元来の気質は穏やかで。

 自然体の様子が枯れた風貌と相まって、妙な安心感や親近感を与えるのかもしれない。だから、ちょっとしたことを話しかけにいったり、時には相談事を持ち込んだりする生徒もいるのだろう。

 どちらかと言えば生徒の方に近い年齢の私も、その気持ちはわかる気がした。



 それを言葉にすると、やっぱり接客業のお世辞みたいになりそうだったので、代わりに別のことを言った。



「キノさんに心開いている生徒さんは、多分人間を見られる人たちなんだと思うな」


 抽象的でよくわからない表現になってしまったけど、微笑んでいるキノさんを見ていると、おおよそ伝わったのではないかと思えた。



「どういう子たちなんですか?」


「今の時代を生きている多くの同世代の子たちと変わらないよ。当たり前のように将来の夢はYouTuberと言ってみたり、ちょっと流行った動画があれば延々とそれの真似を繰り返していたりね」



 生徒の様子を思い出しているのか、キノさんは少し笑っていた。

 そうか、元気でノリの良さそうな子も多いなら……。



「ね、キノさん! 私サンバやってるの前言いましたよね? 入ってるチームの助けも得て、お店のお客さんの知り合いも紹介してもらって、音楽イベントやるんです」


「へぇ」


 キノさんは驚きというよりは感心した様子を見せた。


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