るいぷる御殿
るいぷるが司会となってののんちゃんの自己紹介はつづく。
「のんてぃが苦手なものも教えちゃお? みんな、秘密だよ? みんながのんてぃの秘密、共有すんのかぁ。わっくわくすんねー!」
「苦手なもの――別に秘密にしてるものはないけど……んー、なにが苦手だろ……あ、クワガタ苦手かも」
へえ、そうなんだ? なんかかわいいな。
マレはどうなんだろう? 虫が苦手といった話はあまり聞いたことはなかった気がする。双子でもあの年齢になれば、それぞれで別の趣味嗜好を持っていてもおかしくはない。実際、好きな食べ物も全然違っていたし。
しかしなるほど。苦手な部分を晒すという行為は、意外と好印象を与えることもあるのかもしれない。そこまで見据えてのことなら、るいぷるの司会、意外と良いのでは?
「マジでっ⁉︎ 小二男子の宝物クワガタが⁉︎ 実際五十万円くらいするやつもいるという、ひと財産築けるお宝が⁉︎」
「うん――あれ、なんか怖い。理由は何なんだろ……堅そうだから? 鋭い感じがするから、かなぁ?」
「そこがかっけぇんだと思うんだけどなぁ。まあガンダムと一緒か。あれかっこいいって思う人多いけど、なんか全部三角と四角で構成されていてなんか怖い、って見方をしたら、そういう風にも見えるしねぇ」
るいぷるの例えは的を得ていたのかいないのか。本人も深いところでは理由がわからないためか、曖昧に頷くのんちゃん。
「ほーかぁ、のんてぃはクワガタが怖い、と。……ほんで?」
「ほんで?」
「せや。ほんで? や」
「えっ……他の苦手なのを言えば良いの? うーん、バス乗るの苦手かなぁ。乗り方もよくわからないし、車は平気なのにバスだと気持ち悪くなったりするし」
「せやなー。バス、分かり難いよねぇ。何で同じ乗り場で違うところ連れてかれるの! ……ほんで?」
「えっ⁉︎ まだ続くの?」
伝説の司会者のやりかたのひとつだ。もちろん、本家はただ追求するだけではないが。
「だってのんてぃが最後じゃん? これ終わったら楽しい自己紹介タイム終わっちゃうじゃん? 終わったら練習とか始まっちゃうじゃん?」
「そういうことかっ! そんなことにのんちゃんを巻き込まないでよ!」
妙になよなよしながらよくわからない主張を始めたるいぷるに、むしろ自己紹介をサクサク終わらせようとしていたみことが食らいついた。
「のんちゃん、無理に延命しなくて良いからね。なんか言いたいこと、言っておきたいことあるかな?」
「えっと、入会してすぐに楽しそうなイベントに参加させてもらえてうれしいです。わたしはマレと違って他ジャンルの経験もないから足引っ張んないように頑張ります!」
「のんちゃん素敵! 一緒に楽しもう!」みことが拍手を送る。
るいぷるとにーなが余計なことを言って混ぜっ返さないようにしたのかもしれない。