自己紹介(るいぷる)
今日はユニット系出し物の初練習だ。
全員がそれぞれで出る演目にすべて被っているわけではないが、主要なところは重複しているので、このメンバーでグループを作って合同の自主練習を組むことにしていた。
第一回目ということもあり、決起会を兼ねている。外部参加でありメンバーとは馴染みの無いマレとのお互いの紹介の場でもある。
練習期間が短いので、決起会と言いながらも飲み食いおしゃべりはほどほどに、今日は今日でしっかり練習もスタートさせる予定だ。
「じゃあ人生大先輩ダンサーのわたしからね」
るいぷるが口火を切った。
大先輩云々が彼女の中で流行っているのだろうか。
「サンバネームは燦然と輝くるいぷる!」
え、燦然と輝くも名前?
「ご存じの通りチームきってのクール&ビューティー! 憧れのおねーさんだよっ? 草タイプのポケモンなので光合成に対して強く出れる特徴を持っているんだ!」
本気? 全然まともな自己紹介する気無い?
「……いるんだ! って、それで終わったの……?」
みことの冷めた目などどこ吹く風のるいぷるは、「え、なになに? もっと知りたいの? 欲しがり屋さんなの? わたしのこと、気になっちゃう感じ?」なんて言っては、「や、終わってんなら良いけど」と更に冷たくあしらわれている。
「んじゃ、質問コーナー! みんなの憧れるいぷるおねーさんがみんなの質問に答えちゃうゾ☆」
「うざっ」
「だるっ」
「終わったんじゃないの⁉︎」
みこと、ひい、ほづみが同時に声を発した。
質問の声は特にない。るいぷるはわくわくした顔で質問を待っている。
「ちょっと、どーすんの?」
「なんか訊かないと終わらない気?」
「え、別に訊きたいことない……」
「あんま興味ない……」
「おい! 覚悟あって喋ってんかコラ! 終わらない自己紹介始まんぞコラ!」
「ガラわるっ」
「あれのなにがビューティって……?」
「とりみだしちゃってまぁ。みっともないねぇ」
「ねえ、ほんと、終われないからっ! せめて一問くらい訊いてっ……!」
「ご機嫌からキレたかと思ったら、こんどは泣き入ったよ」
「あれが大人の姿かと思うと……情けない」
「えっと、じゃあ、『ぷる』ってなんですか……?」
どうもるいぷるはいじられキャラというか、年下でもいじり倒して良い立ち位置のようだ。
『ソルエス』メンバーたちは言いたいことを言っている。まだ新参の私やのんちゃんはちょっと様子見の態勢だ。そんな中、マレがるいぷるを助ける質問を投げかけた。敬語なのが初々しい。
投げたボールに飛びつく犬のように、輝かんばかりの笑顔でるいぷるはその質問に食らいついた。
あ、これが「燦然と輝く」ってこと?
「さすが! お目が高ぅございますなぁ⁉︎ 旦那ぁ、あっし、一生ついて行きますぜ?」
「いいから。せっかく質問してもらえたんだから、ちゃちゃっと答えて次行こうよ。まだ自己紹介一人目だよ?」
冷静なみこと。
「確かに!!‼︎」
「うるさっ……」
隣のみことが耳を抑える。もしかしたら冷静な処理をされたみことへの意趣返し?
なんか急に元気になるなぁ。
「えっとね、『ぷる』って、かいらしかろ? かーいいわたしのためにあるような音だから! わたし以前か、わたし以後か! ってことよねー」
まったく意味が解らないが、マレは「なるほど」と納得のリアクションを返していた。深堀したら終わらないし深堀してもあまり意味が無いと思ったのかもしれない。