他にもあるよ
マレと一緒にパフォーマンスをする。
その構想について話すと、マレの表情は目に見えて明るくなった。
「楽しそう! でもほまれちゃん、私が燃え尽きるくらいのダンスを踊れる音、出せるの?」
マレが挑戦的な目で尋ねる。
「ふふーん。私結構センスあるんだよ。三年間やってきた成果見せてあげる。ただ、これで燃え尽きられちゃ困るんだよね」
私が考えていることは先ほどのユニットだけではない。イベントではとにかくマレと一緒に楽しむのだ。そのための要素を今回のイベントには詰め込んだつもりだった。
任意でエントリーできる形式だ。
あまり特定の演者ばかりというのは望ましくはないが、チームエントリーのもの以外で、三演目くらいは許容範囲だろう。発案者権限で枠は押さえさせてもらっている。
そもそも本番まで時間がない。募集数を超えたエントリー者が集まってしまって、抽選になるといった事態にはなり難い状況ではあるのだが。
私がやろうとしている演目はあとふたつある。
ひとつはユニット名を『幼馴染+ざぶとんいちぼ』
のんちゃんと姫田姉妹の幼馴染が演奏を担当。
のんちゃんとがんちゃんがスルド、いのりは弦楽器『カヴァキーニョ』を担当する。具体的な構成はまだ詰めていないが、内容によってはいのりが歌も担当する。
わたしとマレの幼馴染コンビは、バレエを軸にしたペアダンスを踊る。
バレエで男女が踊るパ・ド・ドゥも私が男役で少しだけ取り入れる。あまり経験はなく筋力に自信もないからあまりアクロバティックなことはできないが、リフトはやはり見せ場になり得る。冒頭でこれを魅せ一気に引き込むつもりだ。
基本はバレエのデュエットや群舞を応用してペアリングするダンスで構成する。
群舞にシフトするタイミングでバレエ経験者のるいぷるとロックダンス経験者のにーなに合流してもらい、バレエを基本にはしつつ、サンバの基本ステップのサンバ・ノ・ペや、ロックダンスの動きも取り入れたコレオのユニットダンスにしようと思っている。
これにもマレに出てもらいたい。演目の順番はまだ全く決まっていないが、マレのバレエは魂をも燃やし尽くすようなダンスは、踊り終えた後のマレの姿を何度も見ている私は知っているつもりだ。
汗にまみれ、洗い呼吸を整えながらも尚燃え盛るような瞳。立ち上る蒸気は身に纏った気迫のようだった。
しかしそれは、全力を全開で出し切った者の姿だ。余力など残さずに。
バレエでもコンテストではなく舞台なら、役によっては何回も出たり履けたりすることもあり、一回一回で消耗し切っていては役割の完遂はできず、マレも当然そのような踊り方もできるが、その舞台全体を通して「一舞台で全力を出し尽くす」という踊り方に変わりはない。
今回のように明らかに内容もメッセージも異なる演目で、合間に着替えや場合によってはメイクも挟む出演の仕方だと、集中力は一旦切れるだろうし、意識の切り替えも必要になる。
マレのことだからひとつ目でコンテストの時のような演じ方をして完全燃焼してしまいそうだなと、実は不器用な妹分を想った。
気をつけるのは本番のことだけではない。ユニットダンスはバレエ以外の要素もある。マレにも相応に練習してもらう必要があった。