晴れた空の下の広場で
行政ではなく企業の手で築かれた広場は、休日はイベントで使用されることが多いが、イベントが無い時は大きな公園として近隣住人の憩いの場となっていた。
広さはそこそこだが、遊具等は無く開放感のある敷地となっている。別の公園も隣接していて利用者は多い。
しかし、少し足を延ばせばさらに大きな公園もあり、人口の多い街ではありながら公園を利用したい市民が一か所に集中したりはせず、ほどほどの賑わいは穏やかな日常を演出していた。
椅子も多くはないが並んで座ることができた。
道すがらのパン屋さんで買ったパンをふたりの間とお互いの膝の上に広げる。
何気ない街のパン屋さんといった風体のお店は地元の人気店だったようで、サンドイッチは売り切れていた。
焼き芋の餡バターパンやナッツ入りのカレーパン、里芋のパン等々、珍しいものや興味を引くパンが多く、ついつい買いすぎてしまったかもしれない。
たまたまその日はコーヒーデーとのことで五百円以上の購入でコーヒーも付けてもらえた。
天気の良さや空気感も相俟って、ピクニック感が高まる。
「そのオレンジとチョコのパンおいしそうだね。ひとくちちょうだい?」
今日のマレの朝ごはんはスムージーとヨーグルト、バナナ、オレンジとサプリ。お昼は食べていないらしく、多少の調理パンくらいは食べても問題ないとのことだ。
「うん、シェアしよー。マレのチーズのやつ食べたいなぁ」
「うん、ちぎるね」
マレは穏やかに笑った。
穏やかなマレ。マレが持つ強気な元気さが今日は影を潜めていた。
「このまえね、びっくりしたことあったんだ。聞いてる?」
何ひとつ具体的な内容が開示されていない問い。
探る意図ではなく、万が一聞いていなかったことに備えて衝撃に準備ができる言い方にしたつもりだ。
「のぞみのこと? 聞いた。ほまれちゃんが教えるんでしょ?」
少し元気がなく、少し煮え切らない。
マレのこの感じは私が妹に取られたから、と思うのは自意識過剰? それならそれでも良い。私はもう、マレの手を離さないと決めたのだから、うっとうしがられたとしてもマレの手を引くべきなのだ。
「ねえ、マレ。前に話したこと覚えてるでしょ? マレのやりたいこと、私のやりたいこと、できるだけやろうって」
マレはかじったパンをもぐもぐしながら頷く。
「私いろいろ考えたんだ。それで、イベントやろうって思って。観て聴いて楽しめて、歌って踊って騒げるやつ」
「えー、ほまれちゃんそんなパリピみたいな感じだったっけ?」
「マレだって楽しいのは好きでしょ? 一緒に楽しもうよ」
うん、というマレの歯切れはまだ良くはない。
「マレに楽しんでもらいたいってのはあるんだけど、マレと一緒に楽しみたいって目的もあるんだよ。だから、出る側でマレと一緒に何かやれないかなーって。どうかな?」
マレは口の中のパンを飲み込んで、私を見た。