おうちに帰って
練習が終わって帰り道。
徒歩で帰る私は地上へ、車で帰るいのりとがんちゃん、いのりたちの家の近くに住むのんちゃんと、駅まで送ってもらうことになったらしいダンサーのビオラは地下へと向かうため、エレベーターホールでわかれた。
ぽつぽつとメッセージを打ちながら自宅(要さんの家だけど)へと帰った。送信先のいのりは運転中だろうから返事は少し先になるだろう。
家についてお風呂に入り、要さんが用意していたピーマンと豚肉を炒めた料理を分けてもらって夕食を摂る。
わ、温泉たまごが乗ってる。豪華ー。
しょーちゃんがいないときは晩酌しない要さんは私と自分の分もお茶を淹れ、私の食事に付き合ってくれた。
「とにかくサンバ再開できて良かったね。マレって子のことも、計画? 進められそうじゃない」
ごはんをほおばりながら頷く。
おいしい。おいしい。
要さんと結婚したーい。なんて言っていたら、要さんは「何バカなこと言ってんの」と言いながら、きゅうりを梅干しのペーストと胡麻の入った塩ダレにまぶして叩いてカツオぶしを乗せた小鉢と、野菜が所狭しと突っ込まれている味噌汁を出してくれた。
きっとこれ栄養のバランスも考えられてそう。
「要さん、ごはんってまだあります……?」
「あるけど……この時間だよ? 食べ過ぎない方が……まあ、結構長い時間練習したっぽいもんね。でも、カロリー使った分を食べるにしても、寝る前にたくさん食べるのが胃に良くないことに変わりないからほどほどによ?」
「はーい。要さんお母さんみたいだなぁ」
「誉がいつまでも子どもみたいだからでしょ。お母さんスタンスで言わせてもらえば、いくら近いとはいえ夜中に近い時間に大きい楽器引っ張って歩いて帰るのってどうなんだろ……どうにかならないの? 都合合えば私が迎えに行っても良いのだけど」
要さんは別に車を所有しているわけではない。迎えに来るとしたら徒歩だ。だとすれば、要さんが現地に行くまでの間、ひとりで夜道を歩くことになる。それではリスクとしては大差ないんじゃ?
私の疑問に要さんは少し考えこみ、スマホを操作し始めた。「お」要さんは操作を続け、「誉、このなかでどれが良い?」と訊いてくる。
パスケースと小銭入れになる革小物? 色んなカラーがあって可愛い。鞄に付けられるタイプだ。
どの鞄でも相性良さそうなのは、オフホワイトとベージュのコンビのタイプだろうか。
「ん」私の応えに頷くと、また操作に戻る要さん。
「今の買っといた。入会祝いね。一週間以内に届くって」と画面を見せてくれた。
どうやらぱっと見おしゃれな革小物だけど、防犯ブザーになっているらしい。小銭入れなどの機能をつけることで、頻繁に取り出すことにより常に手近な状況にあることが意図されているらしい。
「あ、ありがとうございます! いつも身に付けますね! ずっと要さんに守られているみたい」
小物もかわいいが、要さんの私を想ってくれる気持ちが嬉しかった。
「……やっぱあんたバブ味の才能あるわ……うちのお店、向いていると思う」
そんなやり取りをしているうちに食事を終え、後片付けも終えた後でスマホを見ると、いのりから返信があった。
≪エンサイオお疲れ様! るいぷるとの話聴いたよー!≫
≪色々とできそうだよね。グループの方はなんか雑談の場みたいになっちゃってるけど、少し具体的な形を与えてあげられたら、結構な勢いで進んで行く気がする≫
≪楽しみだね!≫
≪骨子の部分、ほまれが良かったら一緒に考えよう!≫
≪おやすみー≫
ぜひ一緒にお願いします! おやすみなさい。と返して画面を閉じる。
具体的に何をするか、よく考えてみよう。