アキちゃんとるいぷる
とりあえずアキちゃんとの関係性は隠さなくて良いことが分かった。ざっくばらんにお店でのことも会話させてもらおう。
「アキちゃん、私にすぐ気づかなかったよね。お店でのことってあまり印象無い……?」
「えー! あきにいひどー! げどー!」
まあ確かにすぐに気づいてもらえなかったのは少し残念だったけれども。
るいぷるの茶々入れはひとまず置いておいて。
「ライティングが違うし雰囲気や髪形やメイクも違うだろ? 瞬間でわかれってのは無理がある……」
「わー、言い訳してるー! いさぎわるーい」
るいぷるはのんちゃんとがんちゃんも巻き込んで「ほらごらん? あれが言い訳する男だよ」なんて言っている。
のんちゃんとがんちゃんも「えー、ひどーい」なんて笑っている。
お店でもそうだったが、アキちゃんは一見クールながら、意外といじられキャラな部分がある。
「お店のことは印象に残ってるよ。もちろん」
アキちゃんもるいぷるのことは一旦放置することにしたようだ。「もちろん……! じゃないよねー、ふぅー! だんでぃずむぅ!」と騒いでいるるいぷるにはもはや見向きもせず完全無視の構えだ。
「あ、よかった! じゃああの話も覚えてる……?」
るいぷるが「えっ、えっ、ラブコメ的なんおっぱじまんの⁉︎ 学校かよー」なんて言うものだから、のんちゃんとがんちゃんもキャーキャー言っている。
さすがにアキちゃんは耐えられなくなったのか、「ちょっと黙って……」と、切れ味の無い言葉で制している。
ラブコメなんかではなくアキちゃんもそれはわかっているようだが、「覚えてる?」って質問は状況によっては圧が強い。熟年夫婦の結婚記念日のようだ。そこに意図があるわけではないので、考えさせる間もなく次の句を繋ぐ。
「あの、手伝ってくれるっていう」
そこまで言うと、アキちゃんは「ああ」という顔をした。
「あれ、実はサンバ絡みなんです。だから、よりお願いしやすくなったかなぁ、なんて」
「まあできることは手伝わせてもらうといったことに変わりはないから。具体的なことが決まったら何でも話してよ」
「うむ。盤石の布陣で挑ませてもらいましょうか。ねね、で、打合せいつする? 焼肉屋?」
るいぷるはグルメサイトを開いている。
うそでしょ? 今予約取ろうとしてる? もう休憩終わるけど⁉︎
何を勝手に参加することにしているのか、といった類の突っ込みは無駄だと思っているのか、アキちゃんは「まあサンバ絡みならみんなで対応した方が良いと思うが……まだ内容も聞いてないからな。元々サンビスタを前提とした話でもなかったし」
この流れ、大丈夫か? とアキちゃんは私に確認をしてくれた。