テンポよく進む相談事
祷さんはまずは聴く姿勢を見せてくれた。
まず率直に、私の想いと希望を伝えた。そして、なんとなく沸いているイメージと。
「うん、素敵な考えだと思う。サンバを知らない人のため、サンバを知らない人も巻き込んで、サンバを見る楽しみとやる楽しみを提供できる場をつくるって発想は、『ソルエス』としても歓迎されると思う。プレヂも喜ぶよ」
プレヂとはプレヂデンチのこと。ポルトガル語で代表の意で、エスコーラでは代表をプレヂと呼ぶ。
「会談のとき、ただ挨拶とちょっとしたヒアリングや質疑応答で終わるのもったいないから、この企画の話もしよう。予めそういう場にしてもらえるよう伝えておくね」
祷さんとしては、できればその場は具体的な動きを詰める機会にしたいと考えているようだった。『エスコーラ』になにを担ってもらうのか。『エスコーラ』に何をもたらすことができるのか。
さすがというか、手慣れているというか、祷さんは企画を推進するうえでの肝の押さえ方を識っているように見えて頼もしい。
この段階では時間を掛けず速やかに、矢継ぎ早に、進めていくのが良いのだそうだ。
だから、今日の打ち合わせでは概要くらいは定めておく必要があった。
「ちょっと思っていることがありまして……パゴーヂ的に場の雰囲気で自由参加というのはありつつ、見せるって意味ではある程度ステージショーも必要かなと。で、せっかくいろいろな人を巻き込むなら、ショーに参加する側も募れないかなぁって」
「うんうん。確かに、それならエスコーラの垣根を超えて色んな参加者の色んなパフォーマンスが見られるね。
ショーとしての厚みが出るし、逆に演者としての準備は限定的にできる。
有志で行くなら出たい人は出るユニット形式にしちゃえば、出たいというメンバーの満足度はあまり損なわないね。誉ちゃんはサンバを知らない人たちもこのショーの部分にも組み込みたいんだよね? そこはちょっと工夫が必要になるね」
祷さんがほぼまとめてくれた。
その工夫の部分、うまいやり方が思いつけば、ちょっと珍しいサンバイベントにできるかもしれない。
骨子さえ決めてしまえばあとは現実的にどう実現できるかと、よりよくするにはどうしたら良いのかを追求する段階に入れる。目先は、形を定めるところさえ固められれば良い。
一般の人の参加者をどうするかという点なら、知り合いを次々巻き込んでいけば良いし、そのうえで人脈や伝手を使った広報戦略は取れそうな気がしている。
やはり、一般の人がどう、サンバのショーに演者として参加できるのか、そのスキーム作りが肝要となりそうだ。