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55.ルイスの手下たち

 かなり難易度の高いお願いだけど、あのクソ親父に反抗してしまった以上は最後までやり通したい。

 誰かがドラゴンを討つことが会社のためになるなら、可能な限り阻止してやる。


『ルイスのパーティーがそこの階層まで来ます。気をつけてください。地上でも、多くの探索者が押し寄せて、強引に入ろうとしています』


 押し切られるのも時間の問題か。


 ややあって、俺たちも通った洞窟の通路から足音が聞こえた。それも多い。

 十人分の人影が現れた。シルバーのチェーンネックレスや指輪をつけている、真ん中にいる男は知っている。

 みっぴーというインフルエンサーの遺体にすがりついていた男。

 最愛の女のか死からどれくらい経ったかな。もうすっかり振り切れたみたいで、意気揚々と仲間たちを引き連れてやってきた。


「ルイスさん……」

「やあ。灯里ちゃんこんな所で会うなんてね。君もハイパーポーション狙いかい?」


 ここまで大急ぎで来たのだろう。配信を見る余裕もなく、こちらの状況も知らないらしい。


「いいえ! ハイパーポーションは別の方法で手に入れます! このドラゴンは殺しません!」

「そう……か。じゃあ、僕に譲ってくれるかい?」

「お断りします!」


 目の前に宝があるのに手に取ろうとしない灯里の意図を、ルイスという男は測りかねているらしい。が、自分の障害になることは理解していた。


「そうかわかった。じゃあ力ずくでドラゴンを殺すよ」

「それも駄目です! 話し合いで解決しましょう!」

「無理だね。なんでも話し合いで解決できるほど、大人の世界は甘くないんだ」

「そ、そうですか! でも暴力はいけません戦争反対です平和が一番で争いではなにも解決しないしあとなんか暴力反対です!」

「お前たち。やれ」

「ひえぇぇ! 克也助けて! あいつやっつけて!」

「まったく」


 一瞬で暴力に頼りやがって。

 親父への反抗のために協力すると言った手前、倒してやるけど。いずれ押し寄せてくる大量の探索者のことを考えれば話し合いで解決したい気持ちもわかるけど。

 なんか、馬鹿すぎて心配になるんだよな。いい奴なのはわかるけど。


 ルイスの命令で、配下の九人が一斉に襲ってくる。俺もひとり前に出て仕掛けた。

 先頭にいたのは、馬鹿みたいに大きな鎚を持った巨漢の男。当たればひとたまりもないだろうそれを回避しつつ、剣に熱を持たせて振る。

 鎚の先端、頭部と柄の繋ぎ目を剣で叩き切れば、それはただの鉄の棒となった。


「……え? ごふっ」


 急に軽くなった武器を持ち上げようとして、勢い余って後ろによろめいた男の腹を蹴って倒す。その向こうから別の男が槍を突いてきた。

 回避。男が続けて突く。それも回避。踏み込んで、剣に雷をまとわせて振る。あたりはしなかったけど、バチバチとスパークを放つ剣にビビったそいつは怯えたように身をすくませる。

 その隙に再度踏み出して今度こそ刃を当てる。スタンガンでやられたように、男は体を震わせて槍を取り落とした。


 同時に、背後から気配がふたつ。男がふたり同時に剣で斬りかかってきた。

 片方は避けながら、片方の剣を炎のエンチャントで受ける。安物の剣は熱に耐えきれずに両断されてしまい、武器を失った男は呆気に取られたような顔をして下がる。


 もうひとりも同じように片付けようと狙いを定めたが、剣に強い力がかかって振れなかった。

 さっき蹴り倒した巨漢の男が、俺の腕を掴んでいた。くそ、モンスターなら倒せばそれきりでも、人間は復活する。殺すわけにもいかないし。


 巨漢の男の膝を蹴り、一緒に倒れ込みながら剣の一撃を避けた。しかし次にさっきの槍男が襲ってくる。回避が間に合わない――。


「ぐはっ!?」


 槍男の方に横から何かがとんでもない勢いで飛んできて、ぶつかって倒した。飛んできたのは人間の体だった。

 今の衝撃だけが原因ではないと言い切れるほど、顔面が殴られたようにボコボコになっていた。


「次は、誰?」


 無口な子供が珍しく挑発的な事を言ったらしい。

 見れば、陽希が剣を構えた三人の男と対峙していた。三人とも、子供を前に明らかに及び腰だ。今飛んできたのは、果敢に挑んでボコボコにやられたひとり目だったんだろうな。

 それでも一斉に掛かれば勝てると考えたのか、三人同時に剣を振り上げた。

 次の瞬間、三つのうちひとつの剣が持ち主の手から吹っ飛んだ。ふたつの刃が陽希の体に届く寸前に、片方の男は膝に矢を受けて派手に転んで刃が逸れた。


 残る一撃を陽希は悠々と避けて、逆にその手首を掴んで捻りあげる。


 ボキボキと嫌な音が聞こえて、男の悲鳴か響き渡る。


 が、それで容赦する彼ではなく、男の折れた手首を離さず引っ張り倒して、うつ伏せになった背中を何度も踏みつけた。


「は、陽希! そこまでにして……」

「うん。援護してくれて、ありがとう」

「どういたしまして。ほら、次の敵を倒すよ」

「わかった」


 敵の大半は今ので戦意喪失していることだろうけどな。


 これなら、当面は問題なさそうだ。そう考えた瞬間、裏切られることになる。


『克也くん。地上から、次々に探索者がそちらに向かってきています』

「そうか。でも、到着するまでまだ時間はあるよな」

『はい。ですがその他にも、途中の階層にいた探索者が向かっています。その数、三十人ほど』


 なんだと。

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