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48.第十三階層の様子

 一切の探索が行われていない、このダンジョンにおける前人未到のエリア。未知の敵がいる可能性もあるから、普通の人間なら万全の装備と人員を揃えて慎重に入らなければならないし、そもそもここまでたどり着くのも困難なはず。


 けど、モンスターから逃げ続けられるというスキルのおかげで、奴は謎の世界に躊躇なく飛び込んだ。素人だから、この階層が未探査で階段近く以外では電波も届かないことを知らなかったのかも。


「今度の探索の参考になるかも」


 桃香が食い入るように画面を見つめている。思わぬところから仕事のヒントが得られたようだ。

 なるほど、これは確かにバズりそうな要素ではある。


 十三階層の階段の周りには広い空間があった。天井もかなり高い。十数メートルはあるだろうか。そこからいくつもの通路が伸びている。通路自体の高さや幅も多い。つまり。


「大型モンスターが歩き回ってるかもしれないわね」

「ドラゴンとかいそうだ」

「いたら大変ね。対策整えないと」


 ドラゴンに巨大なゴーレム。ジャイアント系の獣。人間よりもはるかに大きなモンスターと遭遇することがダンジョンではある。

 ここ第八層では稀だ。通路が細くて、大きすぎるモンスターは移動ができない。時折現れる大きな空間で遭遇することが無くもないって程度。


 しかしもちろん、下に行くほどその機会は多くなるのだろう。

 この手の巨大モンスターを相手に、外国だったら銃を装備したキャスターが活躍することもあるかも。けど日本ではそうはいかない。


 それでも対抗する手段をD-CASTは常に考えて、来週の探査に備えている。


「とりあえず、アンテナと詰め所を設置できるスペースは確認できたわね」

「そうだな。ここでモンスターを警戒しながら設置作業になる」

「どんなモンスターがいるかだけでも確かめたいね」

「なにがいると思う?」

「ジャイアントボアとか」

「巨大猪? 洞窟環境にいるかな。いや、いるかもしれない……」


 階段のあるスペースの様子は確認できたけど、通路を通っていける別の空間に何がいるかわからない。未知の階層だから、何が起こるかわからない。

 配信の中で男は軽快な動きで通路のひとつを選んで飛び込んだ。どんなモンスターと出会っても逃げ切れるという自身があるようだった。


 通路の向こうに、また広い空間があった。電波が弱くなっていたのか、動きが飛び飛びになっている。それでもなんとか、その空間の様子は把握できた。


 ゾンビが大量に蠢いていた。

 さらにその真ん中に、大きな白い影が見える。長い首に大きな羽が生えているから、おそらくドラゴン。

 ゾンビたちもドラゴンも男には気づいていない様子。そして、宝箱が空間の入口付近にあった。

 普通の木箱のような宝箱。中身は完全にランダム。入っているのはアイテムかもしれないしスキルかもしれない。レア度もランダム。開ける者の意思を読み取って中身を変えることもない。


 その中に、さっきのアンデッド寄せの炎が入っていた。レアアイテムっぽい雰囲気に男が狂喜乱舞している隙に、ゾンビの何体かが引き寄せられて攻撃を受けた。

 男はそれで足を負傷し、とにかくレアアイテムであるそれを地上に持って帰るために必死で走った。その途中で配信が切れたようだ。


 その後は俺たちも知っての通り。急いで第十階層まで駆け上がり、途中で無関係なパーティーも巻き込みつつ走って俺たちに助けられた。結果、詰め所にまでスケルトンを呼び寄せてしまった。

 詰め所でも戦う気概を見せるでもなく、掃除用具入れに隠れていたがそこにスケルトンが殺到していく。あの炎は遮蔽物があっても対象のモンスターを引きつけるらしい。


 そしてアイテムに執着して死んだ。



 愚かな行為の結果だし、息子含めて誰からも悲しまれていない死だ。この配信がバズった要素もそこではない。


 問題は、さっき配信に映り込んだもの。ゾンビに囲まれていた白いドラゴンだ。


「これ、どう見てもホーリードラゴン……よね?」

「ああ。間違いない」

「うそ。いたんだ……」


 灯里が呆然としたように言った。


 待ち焦がれていたものが、こんな形で見つかるとは思わなかっただろうな。



 ホーリードラゴン。ダンジョンに出てくるドラゴン系のモンスターの一体で、性格は至って穏和。モンスターにしては珍しく、人間を見かけても攻撃することはない。

 さすがに攻撃を受ければ反撃するし、ドラゴンなだけあって攻撃力も耐久力も高い。しかも厄介なことに、奴は回復スキルを持っている。


 自分に使うこともできるため、殺すにはスキルを使う体力を奪うほどの持久戦に勝つか、回復が追いつかないほどの攻撃を食らわせるしかない。

 さらに近くに傷ついた他のモンスターがいれば、それに向けても使う。モンスターが傷ついているのは当然、探索者と戦っていたからだ。だから回復したモンスターは再び探索者を襲うことになる。

 厄介な相手なのには変わりがない。


 それから、ホーリードラゴンに関する重要な特徴がもうひとつある。


 現状確認されている例では、このモンスターを倒した際に確実にハイパーポーションがドロップする。

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