9 再会
魔力切れ瞬間の微分を完成させた数日後。
朝、マーガレットとマーク、三人で食事をしていると、マーガレットのびっくり発言があった。
「そろそろ異世界で、実践訓練をしましょう。私たちは同行しませんが、ギャレットと彼の姉と、三人で挑戦してください」
?!
ギャレットと、その姉とな!
ギャレットって姉がいたの?
それよりなにより。
「コーレスト師匠の、弟子のギャレットですか?」
か、確認しなきゃ。
「何を言っているのですか。ギャレットはコーレストの甥ですよ。世話をしているだけです」
なんだ〜。そうだったのか〜。それだったらそうと、早く言えばいいのに。
ショコラはなんだか気持ちが軽くなり、なんとなくだが、ギャレットにすぐに会いたい気分になってきた。
「朝食のあと、顔合わせですか?」
「応接間で八時からです」
マーガレットは事務的に答えた。
★
いつものようにコーレストとブルー、三人で朝食を食べているとコーレストが少し寂しそうに話し出す。
「二人に話さなければならないことがあります」
「なんですか? 」
その表情から不審に思って僕は尋ねた。
「近いうちにまた旅に出ようと思います。前回の旅から五年ほど経っていますから、そろそろ候補の子たちが現れるかもしれません。私の使命ですから」
「今回はどのくらいの期間になりますか? 」
「前回は初めての探索の旅だったので三年ほどかかりましたが、もう要領はわかっているので一年から一年半ぐらいでしょうか」
コーレストの為人がわかってきたのに残念だ。かなり年上なのかもしれないが、もっと仲良くなりたかった。
「寂しくなりますね」
「離れるのは、私も辛いのですが、こればかりはどうしようもありません」
「いつ頃出発する予定なんですか? 」
「ショコラのこともあるので……早いに越したことはないのですが、二週間後ぐらいには」
!?
ショコラのこと!
ということは、弟子になれたんだ! でもまったく会っていないのはなぜ? 同じ屋敷にいるはずなのに。
「ショコラは弟子になっていたんですね。でもぜんぜん見かけなかった」
「あなたが召喚師だということを知られる心配があったので、会わないようにこちらで工夫しました」
なるほど、そういうことか。屋敷に来てからの出来事を思い出して、うんうんと納得した。
「そのショコラと異世界探索に行ってほしいのです。詳しい話はショコラも入れてお話ししますね」
ブルーと二人で応接間で待っていると、八時前にショコラが入ってきた。
「おひさしぶりです。よかった、弟子になれたんだね。おめでとう。修行はどう? 大変? 」
僕は立ち上がって挨拶をした。ひさしぶりにショコラを見たが、気品がただよう美しさを感じた。こんなきれいだったんだ……この間はちゃんと見ていなかったし、なんか怒ってたし。
「ありがとーっ。修行はダイエットよ! それより甥っ子だったんだね。早く言ってくれればいいのに。こちらがお姉さん?」
前言撤回。なんだか感じが違う。違いすぎて、引いてしまいそうだ。ひきつった笑顔をもどす。
ブルーが立ち上がって、弟がお世話になっています、と挨拶すると、いえいえ、こちらこそ、と返すショコラ。
うーん、儀礼的だな。ショコラも僕もお互い、世話にはなっていないと思うんだけど。でも他人への感謝って大事だよね。
まだ会っていなかった二人の老人も入り、応接間にはコーレストも含めて六人が揃った。
なるほど、この老人二人がショコラの面倒を見ていたのか。この二人も召喚された人で、魔術師。コーレストのフェイクを手伝っていたのだ。実力は確かなはず。
あれ? この二人の実力が確かなはずなら、ジョンとメアリーは?
ガーデンレベル1の、ジョン、メアリーを思い出して、あれは偽りの姿だったことに気づいた。インチキ魔術を支えているのに、あの程度で魔力切れとか、足りないとか、あり得ない!
だまされていたのか…………
あ、そういえば、今、ショコラをだましてるんだった。