6 僕にできること
部屋に戻ろうととすると、ブルーもついてくる。
部屋に入ると一緒に入ってくる。
部屋のベッドは二つになっていた……
話しの流れから考えれば、二つ目はブルーのベッドだろう。僕が召喚したのだから、という理由だと思うが、いいのか?
コーレストは老人と同室なのだろうか?
うーん、お姉さんと同室、初めての経験だ。姉貴いなかったし。
本人は了解しているのかな?
やはり、一度はきちんと確認しておこう。
「僕と同室は、かまわないの? 」
ブルーは僕の顔を見て、むしろそのほうは都合が良いと思います、という。
都合って何さ、怖くて聞けないよ。
「ブルーはほんとうに僕が召喚したのかな。どうしたらそれを確認できるの? 」
「一時的な召喚解除をすればわかります。解除をすると身体になかったはずの傷ができるので。試してみますか? 」
なるほど、それではっきりするなら、一度は試してみよう。ただ、召喚師だとバレないようにするためにはずーっと呼び出したままがいいらしい。
「どうすれば解除できるの? 」
「召喚解除、と、ことばにすれば解除できます。声に出しても、心の中で唱えても変わりません。呼び出すときは名前を呼んでもらえれば、ここに来ます」
召喚解除、心の中で唱えてみた。すると驚いたことに目の前にいたブルーが霧のように消えた。急いで服を脱いでパンツ一枚となり、身体中調べてみたら、左肩十センチほど下ーー心臓の辺りかもしれないーーに手術後のような傷跡が一つできていた。確かに今までなかったものだ。
ブルー、出ておいで。心の中で唱えてみる。すると突然ブルーが現れた。さっきと同じ姿。心臓のあたりを見たら、傷跡はなくなっている。
まちがいない。ブルーは僕が召喚している……
あらためて現実を知った。
「どうでしたか? 確認できましたか? 」
かわいい笑顔で尋ねてくる。
翌日からは、また剣術の鍛錬が続いた。ブルーは僕と一緒に食事をとり、その後、ジョン、メアリーとともに過ごしているようだ。家事を手伝いながら、この国の常識を学んでいるらしい。召喚された人同士だから、気の置けない関係にすぐになれたのだろう。
僕は鍛錬中に、とても重大なことに気がついてしまった。
それは、ブルーを召喚してしまった今、僕にできることがまったくないということだ。
次の人はいつ召喚できるかはわからない。新たな召喚は、召喚相手がこの世界に来てしまってから、あ、召喚した、とわかるものらしい。つまり、人の召喚はいつも事後的なものだとコーレストは言っていた。
コーレストのようにインチキ魔術師を演じることは、ブルー一人だけでは無理だろう。
戦闘において僕ができることは、ブルーを見守ることだけ? あるいは、逃げ回るしかない?
このことに気がついてから、よりいっそう、僕は剣術の鍛錬に集中した。
まあ、いくら集中しても、すぐには上手くならないけど、僕が今できることは、それしかない。
まぁ、どうにかなるだろう。