5 ショコラの修行
老人は朝が早い。
誰がそんなことを言ったのか。ぜんぜん早くない。私の方が早く起きた! まあ、お腹、すいたからね。
ぐっすり寝ている老人二人を起こして、弟子なのに朝食に誘う。だってお腹すいたから。いいじゃん。
二人が執事、メイドになって、隣の部屋で、三人で食べる。
ホントに三人で共同生活なのね。ただ、身の回りのこととかは二人がしてくれるので助かる。ありがたい。
午前中は座学少しと魔力コントロール。魔力コントロールは、魔力を右手、右足、左足、左手、頭とスムーズに魔力を移動させる。右半身、左半身、体の前、体の後ろと順番に魔力を集中させる。これを一時間以上ずーっと続ける。順番が変わることもあるけど、汗がじっとりとにじみ、思った以上にしんどい。
午後は剣術の練習をしてから、魔術訓練をする。この日は風刃を撃ち続けた。最後はやはり、魔力切れから気を失って翌朝になっていたーー
毎日同じことの繰り返し。
毎日気を失って朝をむかえるなんて、これ以上ないステキなダイエット!
違うところは、魔術訓練が、風刃、水球、風刃と日替わり交互になっているところ。あと、座学の内容と魔術を撃ち続ける時間がほんの少しずつ、長くなっているとこぐらい。
たまに、たまにだけどギャレットのことを思い出す。あれから一度も会っていない。
ほんとうに弟子ではないのかしら?
しかし、コーレストにも、一度も会っていない!
やっぱり、一緒になにかしているな。
弟子ではないのかもしれない、けど、ぜっったい何かしている!
食事においしいスイーツがつくわけでもなく、三時のティータイムがあるわけでもない。
修行中の楽しみがない。そんな中、一つだけ楽しみを見つけた。
それは、魔力切れで気を失う瞬間を微分することだ。
どういうふうに、気を失っているのだろう?
最初は単なる疑問だったが、気を失う瞬間の微分は、辛い修行の中では楽しかった。
まあ、それだけほかに楽しみがないとも言えるんだけど。
攻撃魔術を、呪文を唱えながら撃ち続ける。そうするとあるところから、お、もうすぐ魔力が尽きる、となんとなくわかる。
そこで放つ魔術よりも体内魔力の残量に気持ちを集中する。ホントはこれ、修行的にはよくないんだろうけど、だけどそうすると見えてくるのだ、気を失う瞬間の映像が。
まず最初に視界がグニャリと歪む。その後、平衡感覚がなくなるというか、天地がひっくり返るというかそんな絵面になる。すると、突然真っ暗になるのだ。この瞬間が一番怖い。
暗いトンネルを抜けると、そこは雪国……ではなく白い花が咲くお花畑である。私はなぜか歌いながらゆっくり踊っているような気がする。ここの気分は最高だ! クルクルまわりながら陽気に踊っていると、いきなりつまづく。
目の前の白い花が一瞬大きく目の前に現れて、それが徐々に同心円状に小さくなっていき、そして意識が消える。
十日以上かけて修行した成果が、これだけだったら悲しい……