47 四人めの訪問者
夜中に呼び鈴が鳴った。
怖くて無視していたら、ブルーが起きて、やっと来たようです、とか言って玄関に向かう。僕も起きてあとについて行った。
玄関をブルーが開けると、小柄な女性が立っている。見たことのない人だ。ブルーも初めて会う人らしく、動きが止まってしまった。
「こんばんは、こんな、夜中にごめんなさい。それから、玄関を開けてくれて、ありがとうございます。シャノン……シャノン・エルノーです」
ブルーは、あぁ、と小さくつぶやいて、
「こんばんは、アンリエッタさんから聞いています。初めてお会いするので、ちょっと戸惑ってしまいました」
そう言ってシャノンを招き入れた。
夜中だったし、彼女ははとても疲れているように見えたので、アリエッタがいた部屋、すでに新しい人を迎え入れるために寝具などをきれいにしてあった、その部屋で休んでもらった。アンリエッタさんがいた部屋です、ブルーがそう言うと、シャノンは安心したような笑みを浮かべた。
翌日、シャノンはなかなか起きて来なかった。シャノンの気持ちを考えて、そのまま僕らはいつものガーデンに行った。
野菜と果物を収穫して、いつもの『おいらの買い物カゴ』に持っていったが、街中がかなり落ち着かない感じだった。魔導師団、騎士団の巡回を何度も見かけた。
オヤジさんが声を低くして言う。
「魔導師団を抜けた者がいるらしい。噂だがな。あの魔導師団から……ということは、たぶん、脱走者は召喚師だろう。こりゃあ、しばらくは動けないな。まさか、あんたたちが……からんでいないか……ぁぁ悪い、そんなわけないか、悪い、悪い」
「物ならば、アレですけど、人はちょっと無理ですよね」
ブルーが短く答えた。
それより、その人、うちに来てる人だよね? 召喚師なの? ブルーが黙ってるから、細かいことがわからないんだけど。
僕らはなにもしてないよね? アンリエッタが全部仕組んだことだよね? うん、アンリエッタが犯人です。
まぁ、ブルーが話さないのは、僕によけいな心配をさせないように、という配慮なんだろうけど。それに、僕が知ったところでなにもできないし…………
僕と同じ召喚師か。その人が捕まったら、僕も捕まっちゃうかもしれない?
お金を受け取ると、ブルーは、なにかあれば、知らせてください、仕事に関係しますので、とオヤジさんにいうと、オヤジさんはなんの躊躇もなく、わかった、と答えている。
二人の間になにがあったのだろう。なんか以心伝心って感じだ。僕は離群索居って感じだよ。
帰り道、ブルーに
「大変なことになってるね。シャノン、大丈夫かな」
そう尋ねたら、ブルーはニコッと笑った。事情の説明はやっぱりないんだね……
家に帰ると、シャノンは居間で、ぽつねんと椅子に座っている。
これからひとりで生きる…………そのなんとも言いようがない孤独感が伝わってくる……
シャノン、召喚師なんだね、これから、どう生きていくのか……僕は涙が出そうになった。
ところで、呼び出すものはなにかな?
シャノンに街で聞いた内容を伝えたら、思っていたよりもしっかりしていて、
「覚悟はできていますから。それにアンリエッタが頼った方々なので、信頼しています」
とうなずく。そんなに信頼されても困るんだけど。
ブルーがアンリエッタが置いていってくれた偽装の仮面を渡す。
「これで誰かに偽装してください。適当な人はいますか?」
シャノンは仮面を手に取ってしみじみと、これなのか〜、遺物を使ったらそりゃあ、カラスくんもわからないな〜とつぶやく。
なるほど、召喚するのはカラスなんですね。僕は心の中で確認する。
シャノンは仮面をつけると、なんだかブルーと似た顔になった。でも目がアクアマリンの色ではなくピンクがかっている。
え? まさか? ブルーの姉妹になろうとしている?
「お姉さん、これはダメ?」
ちょっと甘えた声である。もちろんダメだよね? それよりブルーに妹っているの?
そう思ってブルーを見たら、
「あーーーーぁ、その手があったんですね。気がつきませんでした。大丈夫、オーケーです! 二人でギャルくんをかわいがりましょう。でもあたしのギャルくんだから、手を出すのは厳禁だからね」
え? え? なにそれ?
「ありがとうございます。お姉さん! 手を出さないと誓います!」
そう言って僕を見て、
「ギャルくんって呼ばれてるんだね。よろしくね。ギャルくん」
と、くすっと笑ったあと、明るい顔で右手を出してくる。僕はつい、右手を出して握手してしまった。
アンリエッタも仮面をかぶってキャラが変わったけど、シャノンも変わったよね? もっと内向的な人だと思ったのに! 仮面って性格も変えちゃうの?
ところで、僕、姉が二人になるの? え?
何気なく流されているようだけど、さっきのブルーの発言は姉の発言ではないよね?
シャノン、気づいてないのね。




