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46 旅立ち

 マリカはレスリーが突然訪ねて来たので、ほんとうに驚いた。ミュート家に行くとは伝えてあったが、まさか来るとは思わなかった。


 マリカがドアを開けたので、レスリーも驚いた表情をした。まさか同郷のマリカがミュート家にいるとは思っていなかったからだろう。しかし、レスリーはすぐにマリカが実はアンリエッタだと気づいた。マリカがセントディアにいるはずはない。


 再会した喜びと互いが無事でいることに安心して、思わず抱擁を交わした。ことばは出てこなかった。


 レスリーを家に招き入れたあと、マリカはレスリーをミュート姉弟になんと言って紹介しようか、迷った。

 家に入るときに、レスリーから魔導師団を退団したことを聞いたので、同郷の友人が訪ねて来たことにしよう……


「マリカさんのお友だち、仲間ですね」


 説明をする前からブルーが、さも知っているかのような態度を示した。


「マリカさんの仲間です」

 弟のギャレットにも同じように紹介する。


 レスリーは状況がよくわからず、困った顔をして、挨拶をしていた。


 あとでレスリーには、私が盗賊という設定になっていることを教えなければならない、そうマリカは思った。







 その日の午後、マリカは買い物から帰って、家に入ろうとしたところをカラスに襲われた。


 意味がわからない。カラスをいじめた覚えはない。

 怖い。カラスのクチバシも足も、凶器に近い。


 あわてて家の中に入ってから、あっ、と気づいた。


 あのカラスは、野良のカラスではなくて、シャノンのカラスだ。

 すぐに気づかないなんて。私はよほど、気が緩んでいる。


 ていうか、なんでシャノンのカラスが来てるの? しかもミュート家に。

 まさか、魔導師団の依頼を受けて? レスリーが尾行されてた? レスリーも実は……? だったら、団員がすぐに捕縛しに来る…………



 いや、捕縛するつもりなら、襲わずに、監視するはずだ。



 きっとシャノンは気がついたんだ。私が生きていて、レスリーが会いにくることに。


 なんで、わかったのだろう。シャノンは勘のいい子だけど、なぜこの計画が?




 カラスのことばは、マリカにはわからない。しかし、仲が良かったシャノンが、わざと私を襲うように仕向けるということは、きっと意図があるはず。だったら、もう、あれしかない……



「わかったから。そう、シャノンに伝えて」

 再び玄関に出て、襲ってくるカラスにそう呟くと、途端にカラスは飛んで行ってしまった。





 夜、ショコラさんが来た。


 レスリーといい、シャノンのカラスといい、ショコラさんといい、なぜか、今日は来客が多い……


 マリカはそう思いながらも、人生の大きな転換点なのかも知れない、と思う。


 それは、私にとっても、レスリーやシャノンにとっても。きっと生涯、忘れることのできない大事な一日なのかも、もう一日、終わっちゃうけど。終わりかけで、気づいてラッキーと思おう。



 ショコラさんはマリカに挨拶すると、

「マリカさんにお願いがあって来たの。マリカさんも一緒にお願いします」

 そう言って、ズイズイ家の中に入り、ブルーやギャレットのいるリビングに向かう。


 居間では二人とレスリーが世間話をしていた。レスリーはだいぶ困っているようだったが。

 たぶん、話がかみ合わないのだろう…………わかる……






 お願いとは、私に、遺物の種をリパンのローズ家に持って行ってもらいたいということだった。


 ショコラさんいわく、

 探協に頼もうかとも思ったが、それよりはミュート家の人のほうが信頼できる、マリカさんもいろいろ事情があるようだから、レスリーと二人でリパンのローズ家で働いてみるのはどうか、セントディアにいるよりはきっといいと思うし、ローズ家にとってもいいことだと思う、と。


「ありがとうございます」

 そう言って私は受けた。

 レスリーは、わけがわからない顔をしていた……






 翌日の朝早く、種とショコラさんの書状を持ってリパンに向けて、出発した。


 テーブルには、ブルーさんに向けた手紙と偽装の仮面を置いておいた。

 偽装の仮面はもう、いらない。レスリーに【偽装】をかけてもらえばいいのだから。



 きっとうまくいく。





 それは、私とレスリーもこれから幸せになるから。







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